第十二話/三月二十一日/真魚④
“三月二十一日、午前四時、世界は光に包まれる”
佐伯美緒は、自らの身体へ弘法大師、空海の魂を転生させる。
圧倒的な祈りの力、法力を伴って……
千二百年の時を経て、遍照金剛が現世へと降り立つ。
弘法大師『空海』・・・真魚
吉備の鬼神『温羅』・・・みさき
『吉備津神社』宮司の娘・・・伽耶
空海を追う『摩』法少女・・・七瀬
四人の女子高生が織りなす、「因縁生起」を巡る物語――
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岡山・香川の実在の旧跡・名所を舞台に繰り広げられる、バトルコメディ奇譚。
小旅行気分でお読みください。
弘法大師 生誕一二五〇年 入定一二〇〇年 祈念作品
※この作品はフィクションです。実在の人物・団体、等とは一切関係ありません。
また、特定の宗教・教義を礼賛するものではありません。
――引き戸が軋みを上げながら、ゆっくりと開いた。
まず目に飛びこんできたのは、鈍色の刃。
次に姿を現したのは、黒い服を着た銀髪の少女。
小柄な身に不相応な刀が大きく見える。
その瞬間、刃が閃いた。
床に身を投げ、辛うじて躱す。
錫杖を翳し、急速落下してくる白刃を受け止めた。
その迷いのない太刀筋に、思わず呼吸をすることも忘れてしまう。
錫杖を振り払い刀を弾くと、後ずさって大きく間合いを取った。
「お大師さまぁ! その錫杖は国宝なんです! 壊さないようにお願いしまぁす!」
場違いな声が割り込んでくる。
「そんな事言っとる場合か!」
少女は大きく一歩を踏み出し、
「ひれ伏せっ!」
響き渡る声で吼えた。
激しい霊力が身体を押さえつけるように圧し掛かる。
背筋が痺れ、足が竦んだ。
翁と媼は抗えず、地面に頭を擦りつけて突っ伏している。
刹那、少女の手から繰り出された霊符が一直線に飛んできた。
錫杖で虚空に十字を描くと、空中で爆ぜる。
「燃えちゃう! 五重塔が燃えちゃう!」
翁が頭を抱えて、悲鳴を上げた。
爆炎を裂くように、少女が向かってくる。
そっちがそういう態度で来るのなら……。
法力を言葉に乗せて吐き出すように、大声で叫んだ。
「話を聞けぃ!」
お返しとばかりに、今度は少女に圧倒的な法力が降りかかる。
こんな威圧的なやり方は不本意だが、致し方なし。命が惜しい。
萎縮したように足を震わせ、動きが止まる。
何とか話をしようと口を開きかけた刹那、
「うぉぉぉぉおぉぉ」
天を仰いだ少女が、咆哮を上げた。
目にも止まらぬ速さで踏み出し、霊刀が翻る。
床すれすれの体勢から刃が眼前へ捻じ込まれた。
錫杖を薙ぎ、切っ先を逸らせる。
右手を振り上げると、法力を握り潰すように圧し固め、振り下ろしざまに掌から放った。
稲妻のような閃きが少女の足元を穿つ。
怯んだその隙に、間合いを取った。
しかし、小細工は逆効果だったようだ。
手負いの獣のように、今まで以上に死に物狂いで襲いかかってくる。
この若さでこれだけの力、威圧感。
恐怖を跳ねのけるだけの胆力。
さぞや厳しい修行に耐えたのであろう。
なおも少女の追撃が続く。
錫杖で受け流すにも限度がある。
確実に上がっていく精度。真言を唱える隙もない。
全力で法力をぶつければ止められるかもしれんが、この娘が無事では済むまい。
これ以上は避けられそうにない。
――最終手段!
戸板をぶち破って虚空へと踊り出る。
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