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神保町の古本屋2階でヒュッゲ満喫していたら、北海道の父と沖縄の母のせいで俺の『自己流相殺術』がバグり始めた件について  作者: 風風風


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9/13

第9話【 餃子の誘惑と、夕方の決断 】

「今を幸せに生きる」をモットーに、

定職に就かず、

暴飲暴食や爆買いなど欲望のままに

日々を

謳歌する26歳の主人公の日常です。


どんなに羽目を外しても、

彼独自の

相殺処理に着想を得た「自己流相殺術」で

チャラにできる

という独特なマイルールを持って自由に

生きています。

夕方、零が

腹の虫の音に負けて1階に降りると、

祖母がレジ前で

新聞を広げながらつぶやいた。


「そういえば、駅前の餃子屋、

 今日は珍しく並んでないみたいだよ」


神保町は古書店街であると同時に、

隠れた餃子の激戦区でもある。


皮はパリッと、餡はジューシー。


零が学生時代から通っている

老舗の一軒が、

駅の裏手にひっそりと店を構えている。


(並んでいない……これは

「今しかない」というサインだ。

 逃せば一生の後悔になりかねない)


零は即座に脳内会計を起動する。


「無職の身で外食するという背徳感、

 マイナス50。だが、

 行列を回避して

 効率的に餃子を確保するという戦略眼、

 プラス80。

 さらに祖母への情報提供という

 間接的な社会貢献も加味して、

 実質プラス収支だ」


零はサンダルをつっかけ、

財布片手に古本屋を飛び出した。


夕暮れの神保町、

書店の看板がオレンジ色に染まる中を、

鼻歌交じりに歩いていく。


店に着くと、

案の定カウンターは半分ほど空いている。


零は迷わず

「焼き餃子二人前」と注文し、

満足げに椅子に腰を下ろした。


「これでいい。今日の俺は、

 餃子を手に入れるという

 極めて重要なミッションを完遂した」


パリッと焼けた餃子が運ばれてくると、

零の顔はほころんだ。


今日もまた、神保町の片隅で

小さな帳尻合わせが始まろうとしていた。



【 餃子二人前と、罪悪感のリベート 】


湯気の立つ餃子を頬張りながら、

零は一人でうんうんと頷いていた。


「うまい……。皮がパリパリで、

 中の餡もジューシーだ。これはもう、

 食事というより

 文化的体験と言っていい」


一皿目をあっという間に平らげ、

二皿目に箸を伸ばしたところで、

ふと財布の中身が気になった。


無職の身での連日の出費は、

精神衛生上よろしくない。


(だが待て。よく考えろ)


零は餃子を噛みしめながら、

静かに脳内電卓を叩き始める。


「餃子二人前、金銭的マイナス30。

 無職の分際での外食、

 罪悪感マイナス40。合計マイナス70……。

 しかし、これは単なる贅沢ではない。

 神保町という土地に根付く

 『餃子文化』を継承し、

 地域経済に貢献する行為でもある。

 文化保護活動、プラス100!」


見事なこじつけで

赤字を吹き飛ばした零は、

満足げに残りの餃子を平らげ、

店を後にした。


帰り道、

古本屋の明かりが見えてくると、

祖母が店先で

「あら、早かったね」と声をかけてきた。


「うん、餃子、

 めちゃくちゃうまかったよ。

 ばあちゃんも今度行きなよ」


「あんたが行ってきたなら、

 今度は差し入れでいいわ」


零は「はは」と笑いながら二階へ戻る。


ノートパソコンは

今日も白紙のままだったが、

餃子の満足感と見事な収支計算により、

零の心は

すっかり平穏を取り戻していた。


神保町の夜は、今日も静かに更けていく。


©2026 [風風風]. All rights reserved.

明日、20:40 に、第10話を投稿します。

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