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神保町の古本屋2階でヒュッゲ満喫していたら、北海道の父と沖縄の母のせいで俺の『自己流相殺術』がバグり始めた件について  作者: 風風風


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第6話 【 北海道からの、素っ気ない一行LINE 】

母は沖縄で、父は北海道で、

それぞれ

リモートワークしている。

そんな父母から、短い連絡が

入る。

昼下がり、

零がベッドで

ポテトチップスをかじっていると、

スマホが短く震えた。

父・恭太郎からのLINEだった。


『そっちは暑いだろう。

 仕事忙しい。母さんによろしく』


以上、一行。スタンプすらない。

零は

その素っ気なさに苦笑しながら、

脳内電卓を起動する。


(父からの連絡、

 しかも用件は実質ゼロ。だが、

 これは

「北海道の設計事務所で忙しく働く

 父の生存確認」

 という貴重な情報でもある)


「連絡が来た事実そのもの、プラス30。

 内容が薄すぎることへの若干の寂しさ、

 マイナス10。

 差し引きプラス20……。

 まあ、

 うちの親父らしいっちゃらしいな」


零は

「了解、暑いよ。元気で」とだけ短く返し、

スマホを枕元に放った。

窓の外は真夏の日差しが照りつけ、

古書店街の看板がぎらぎらと光っている。


父が「暑いのが嫌い」と言って

北海道に逃げているのも、

この日差しを見れば納得だった。


零は寝転がったまま、

ぼんやりと天井を見つめる。


「北海道は今頃、

 涼しいんだろうな……。

 ずるいっちゃずるいけど、

 まあ、仕事してるだけマシか」


そう独り言ちながら、零は

また

ポテトチップスに手を伸ばした。


父からの短い連絡は、

それだけで今日の平穏な一日に、

小さな輪郭を与えていた。


【 沖縄からの、絵文字だらけの近況報告 】


父からのLINEに返信してから間もなく、

今度は

母・めぐみから通知が届いた。

開いてみると、

そこには

シーサーとハイビスカスの絵文字が

大量に並んだ、

賑やかなメッセージがあった。


『零〜。元気?* 

沖縄は今日も最高だよ〜* 

湿気もないし人も優しいし*

もう本州には戻れないかも〜*

仕事もはかどるし*

たまにはこっち来なさいよ〜*(笑)』


零は思わず噴き出した。

文面から溢れ出る、

母の底抜けの陽気さ。


父の一行LINEとは対照的すぎて、

いっそすがすがしい。


「うちの親、

 なんでこんな性格が違うのに

 結婚したんだろうな……」


零は苦笑しながら、脳内電卓を叩く。


「母からの絵文字祭りLINE、

 精神的には

 やや疲れるがプラス40の元気の証拠。

 ちなみに

 『こっち来なさいよ』への返信義務は、

 今のところ発生していないと判断する」


零は「元気だよー、こっちも暑い」とだけ

短く返し、

スタンプを一つ添えて送信を終えた。


北海道の父からは業務連絡のような一行、

沖縄の母からは絵文字だらけの近況報告。

両極端な二人の便りを受け取りながら、

零はふと、

この夫婦の

「良くも悪くもない」距離感こそが、

案外うまくいっている秘訣なのかもしれない

と思った。


そんなことを考えているうちに、

いつの間にか夕方になっていた。


今日もまた、

パソコンは開かれることのないまま、

神保町の2階に静かな時間が流れていく。


©2026 [風風風]. All rights reserved.

明日、20:40 に、第7話を投稿します。

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