第3話【 祖母の忘れ物と、緊急出動の相殺 】
祖母の家(父親の実家である古本屋)の
2階で暮らす
主人公のヒュッゲ満喫した暮らしぶりです。
主人公は、
作家志望(夢みてるだけ?)の無職。
祖母が
外出する時だけ店番しているだけの
居候いそうろう。
「今を幸せに生きる」をモットーに、
定職に就かず、
暴飲暴食や爆買いなど欲望のままに
日々を
謳歌する26歳の主人公の日常です。
どんなに羽目を外しても、
彼独自の
相殺処理に着想を得た「自己流相殺術」で
チャラにできる
という独特なマイルールを持って自由に
生きています。
蒸し暑い午後、零がベッドでスマホゲームに興じていると、
階下から
祖母の慌てた声が響いた。
「零ー!
ばあちゃん、老眼鏡忘れて出ちゃった、
悪いんだけど郵便局まで届けてくれない?」
零は舌打ちしかけたが、すぐに頭の中で電卓が動き出す。
(外出……。
日光を浴びるという未知のリスクはあるが、
これは
紛れもない「緊急ミッション」だ。プラス評価は確実)
零はサンダルを突っかけ、
老眼鏡片手に
神保町の路地を早足で駆けていく。
10分ほどで郵便局に着き、無事に
祖母へ手渡すと、
祖母は「ありがとねぇ、助かったよ」と
目を細めた。
帰り道、零は額の汗を拭いながら独り言ちる。
「外出という体力的コストはマイナス30。
だが、
緊急事態への即応、しかも徒歩での
機敏な行動力はプラス120。
さらに、
祖母からの『助かった』という感謝の
言葉には、
精神的ボーナス加算プラス50が発生する……」
古本屋に戻る頃には、零の脳内収支は
すっかり
黒字に転じていた。
二階への階段を上りながら、
彼はにやりと笑う。
「今日はもう、外に出た分の仕事は
終えた。
あとは正々堂々とグータラする権利がある」
そう結論づけると、零は涼しい部屋に
飛び込み、
扇風機の風を全身に浴びながら、
達成感に満ちた
寝そべりのポーズを決めるのだった。
【 宅配便のサインと、社会人スキルの棚卸し 】
部屋で涼んでいると、今度はピンポンと
インターホンが鳴った。
宅配便だ。
零は面倒くさそうに立ち上がりつつも、
内心では
「これもまたチャンスだ」と算盤を弾き始める。
(サインを求められたら、ペン記入までの
一連の動作を完璧にこなす。
これは立派な「社会人スキル」の実演だ)
「はい、ここにサインですね」
配達員に言われるがまま、零はよどみなく
ペンを走らせた。
名前の漢字も崩さず丁寧に。
受け取った荷物は祖母宛の古書資料
だったが、
零はそれを1階まで運び、
レジ横にそっと置いておいた。
戻ってきた祖母が
「あら、ありがとう、気が利くね」と
声をかけると、
零の脳内会計はさらに膨らんでいく。
「サイン対応、プラス60。
荷物の運搬、プラス40。
さらに
『気が利く』という祖母からの評価には、
信頼残高としてプラス80を追加計上する……」
零はベッドに倒れ込みながら、
満足げにつぶやいた。
「今日の俺、もう十分すぎるほど
社会と接続した。
これでノートパソコンを開かなくても、
何の後ろめたさもない」
窓の外では夕暮れが古書店街を茜色に
染めていく。
零は白紙のままのパソコンを横目に、
今日もまた一日を、
見事な黒字決算で締めくくったのだった。
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明日、20:40 に、第4話を投稿します。




