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神保町の古本屋2階でヒュッゲ満喫していたら、北海道の父と沖縄の母のせいで俺の『自己流相殺術』がバグり始めた件について  作者: 風風風


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12/13

第12話 掃除機のコードと、思わぬ発掘物

「今を幸せに生きる」をモットーに、

定職に就かず、

暴飲暴食や爆買いなど欲望のままに

日々を

謳歌する26歳の主人公の日常です。


どんなに羽目を外しても、

彼独自の

相殺処理に着想を得た「自己流相殺術」で

チャラにできる

という独特なマイルールを持って自由に

生きています。

昼過ぎ、祖母が「たまには部屋の掃除でもしなさい」と釘を刺してきたため、零は渋々2階の自室に掃除機をかけることにした。


「……はいはい、わかったよ」


コードを伸ばし、ベッド下に掃除機のノズルを突っ込むと、ガコンと何かに引っかかった。引っ張り出してみると、埃をかぶった古いアルバムだった。表紙には子供っぽい字で「かぞく」と書いてある。


(これは……たしか小学生の頃、夏休みの自由研究で作ったやつだ)


ページをめくると、まだ本州で家族全員が一緒に暮らしていた頃の写真が並んでいた。父が今よりずっと若く、まだ北海道と東京を行き来する生活スタイルになる前の一枚。母が沖縄にハマる前、近所の商店街で買い物袋を提げている一枚。小さい妹が零の後ろに隠れて笑っている一枚もあった。


(そういや、親父が完全に北海道拠点になったの、俺が高校生の頃だったか。母さんが沖縄に本格移住したのは、もっと後だったよな)


零はしばし手を止め、懐かしさに浸った。


「……掃除、中断してアルバム鑑賞という名の『家族史のアーカイブ整理』に切り替えたわけだが、これは立派な文化的作業と言える。プラス60は妥当だろう」


見事なこじつけで掃除の中断を正当化した零は、そのままベッドに寝転がり、アルバムを最後までじっくりと眺め続けるのだった。



【掃除機の放置と、時間泥棒からの帳尻合わせ】


気づけば1時間近く、零はアルバムを片手にぼんやりと物思いにふけっていた。掃除機は電源を入れたまま、部屋の真ん中で放置されている。


「……いかん、完全に脱線した」


零は慌ててアルバムを閉じ、掃除機のスイッチを切った。結局、部屋の埃はほとんど吸い取られていない。


(さて、これをどう相殺するか)


零は脳内電卓を再起動させる。


「掃除の実質的な進捗ゼロ、家事怠慢マイナス80。だが、家族の歴史を振り返るという精神的な棚卸し作業、これは無形の資産形成だ。プラス70……いや、正直ちょっと足りないな」


零は苦し紛れに、床に散らばった埃を数箇所だけティッシュでつまみ取り、「部分的清掃実施」というこじつけをひねり出した。


「これでプラス20追加。合計マイナス80に対してプラス90、かろうじて黒字!」


階下から祖母の声が響く。


「零ー、掃除終わった?」


「あ、うん、まあまあ……」


零は言葉を濁しながら、アルバムをそっと本棚の隅にしまい込んだ。今度また暇な時に、ゆっくり見返そうと決めながら。窓の外では、夏の日差しが古書店街をじりじりと照らし続けていた。


©2026 [風風風]. All rights reserved.

来週の日曜日の20:40 に、第13話を投稿します。

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