電話
「……今日も、来ないのかな」
あれから、およそ一週間後。
そう、ポツリと呟く。そんな僕がいるのは、例によって屋上――そこの小さなベンチに腰掛け、一人の女子生徒を待っているわけで。
だけど、その女子生徒――蒔野さんは姿を見せる気配もない。そして、この状況はここ一週間――彼女が再登校したあの日を最後に、ここ一週間ほど続いていて。
とは言え、彼女が屋上に来ないこと自体に何ら問題があるわけじゃない。そもそも、当然ながらここに来なくてはならない義務なんてないし。
だから、ただ来なくなっただけなら構わない。もちろん、僕としては少し……いや、凄く寂しいけれど、それはあくまで僕側の都合。何処で誰と食事を共にしていても、僕と一緒にいる以上に充実した時間を過ごせているなら、当然ながら僕としては歓迎すべきことで。
だけど……この一週間、毎日のように目にしたのは、中庭のベンチで一人昼食を取る蒔野さんの姿で。もちろん、一人でいるから駄目だとかそういう話じゃない。彼女自身が一人を望むなら、それはもちろん尊重すべき気持ちだし。……ただ、その姿がどうにも寂しげで、悲しげで、儚げで――
「…………ふぅ」
それから、数時間経て。
職員室にて、業務を終えぐっと身体を伸ばす。ぼんやり窓の方へ視線を移すと、既に空はオレンジ色に染まっていて。……ふぅ、もうこんな時間か。
……さて、どうしようかな。少し疲れたし、このまま少しのんびりしても良いんだけど……うん、やっぱり帰ろ。やっぱり、家の方がのんびりできるし。
そういうわけで、さっと帰り支度を済ませ職員室を後に。それから、廊下を経て昇降口へと――
「…………あれ?」
そう、ポツリと呟く。そんな僕の視線の先には、薺先輩――スマホを耳に何かを話している様子を見るに、どうやら通話中のようで。もちろん、その光景自体は何ら不自然なものではないのだけど……だけど、今日は用事があるから先に帰ると言っていたはず。なのに、どうして――
……いや、何でも良いか。当然ながら、今ここに先輩がいることに何ら問題などないわけだし。例えば……予定より用事が早く終わって、折角だし僕がまだ学校にいたら一緒に帰ろうと思ってこうして戻ってきてくれたのかも。……まあ、我ながら何とも都合が良い推測ではあるけど……でも、恋人だし無きにしもあらずだよね。
ともあれ、いずれにせよ声を掛けない理由はない。だけど、微かで断片的ながら会話が聴こえてしまっているのは申し訳ない。なので、ひとまず声の聴こえないところに移動を――
「………………え?」




