第74話:食卓に並ぶ怨念の芯
車輪の魔物の亡骸を、メグーちゃんはじっと見つめていた。
「分かってる。スキルでアイテム化できるんでしょ?」
振り返らずに言う。
ケビンさんが目を見開き、たじろいでいた。
「えっ!?あ、はいっ」
車輪の中央にある異様な顔は、どこかオーグさんを思わせた。
「オーグさんに似てるから、ちょっと……嫌です」
前髪の隙間から呟く。
嫌悪が滲んでいるのが自分でも分かった。
「んだァ!?チンチクリンが何言ってやがる!」
オーグさんが怒鳴る。だがメグーちゃんはちらりと私を見た。
「お腹、空いてるし。それにお母さんや、ケビンの成長にも繋がるんでしょ。やるわ」
メグーちゃんの声は淡々としているが、揺るぎない意志があった。
ケビンさんは意を決してスキルを発動した。
ポンッという軽い音とともに、亡骸が白い煙に包まれる。
煙が晴れると、六つに仕切られた木箱が現れた。
中には濃い茶色の汁に漬けられた具材が湯気を立てている。
その中心に鎮座するのは、黒光りする車輪の芯だ。
芯は牛すじのようにとろりと崩れ、特製味噌ダレが絡んでいる。
味噌の香ばしさが鼻をくすぐった。
「……いただきます」
メグーちゃんは静かに箸を伸ばし、芯の一切れをつまみ上げる。
口に運んだ瞬間、芯がほろりと崩れる。
噛むたびに深い旨味とほのかな苦味が舌に広がるのが、表情を見ていると分かった。
「……うん。これは、いい味」
その頬には、ほんのり紅が差していた。
私もはっとした。
いつも私の許可がなければ発動しなかったケビンさんのスキルが、今回は自然に使えている。
「そ、そういえば……」
メグーちゃんが熱そうにしながらも満足げに口を動かす。
咀嚼を終えると、ぽつりと呟いた。
「過去に見たことのある食材ばかりだったから、じゃないかしら?」
「なるほど……過去に生み出したことがある食材だから、ってことですか?」
ケビンさんが目を瞬かせる。
「アニーさん、どうですか?生み出せるアイテム、増えてます?」
ケビンさんがスキル一覧を確認する。
「え、えっと……そうですね。和入道っていうのが、さっきの魔物の名前みたいで、その魔物に対応するアイテムだけ増えているようです」
「じゃあ、メグーちゃんの言う通りってことだな。使ったことのある食材なら、ケビンさん一人でもスキルが使えると」
オーグさんが腕を組んで頷く。
煙の残り香が漂う中、私たちの冒険はまた一歩、前進を遂げていた。




