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魔法使いザラッラ  作者: 浅賀ソルト
“評価不定”の2つの自立
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巣立ちの時が来て

 私は念押しで、レシレカシ魔法大学への協力をお願いしますと口にした。

「これはどうでもいいことなんだが、レシレカシとか魔法大学、魔法学校と言葉を使い分けるのはどういう意味があるんだ?」族長は最後にそんな疑問を口にした。

「あまり厳密に使い分けませんけど、魔法大学は研究機関としての意味が強いです。魔法について調べ、調査し、研究するのが魔法大学です。魔法学校は魔法を教えるところです。魔法を訓練するところではないので魔法を使えない生徒もいますよ」

「本当か?」

「本当です」外の人間からは意外に思われるがこれは本当。といっても魔法が使えない生徒はかなりの少数派だけど。「レシレカシっていうのは意味がそのたびに変わるので定義できないですね」

「人間同士の争いは非効率だと考えているのはどこになるのかな?」

 私は族長の質問の意味を理解した。「魔法大学の一部の教授と、その運営部ですね。なるほど」私はうなずいた。「国として勢力を広げようとしているのは魔法大学でも魔法学校でもなくレシレカシそのものです」

「君や教授や研究者たちはそれに協力している立場というわけだ?」

「自由に研究するには、支援者同士が足を引っ張り合っていたらやりにくいということですね」

「魔法学校の教授の全員がそこまで研究熱心か? 中には私利私欲のために動いている者もいるのでは?」

「それはもちろんいるでしょうね。本音は隠しているでしょうけど、確実にいます。そういう奴も研究の足を引っ張る邪魔者ですが」

 族長は大きく息を吐いた。それから腕を組んで胸を反らせた。天井を見た。んーとうなるだけだった。

 私は言った。「ブユ族にもレシレカシの卒業生はいるでしょう? 話を聞いてみては? 私が嘘をついているわけではないと分かると思いますよ」

「はっはっはっ」族長は急に笑い出した。「そうなんだ。なぜかレシレカシに行った若者はブユの味方にならなくてな。降伏だの和睦だの、そういうことを言うようになる。敵の肩を持っているわけではないんだが、“家族”を大事にしなくなる」

「ああ、それこそレシレカシです。あそこにずっといるとそういう考え方に染まります」私も大いに賛同して微笑んだ。

 族長はなおも笑った。「なるほど。ありがとう。レシレカシというものが理解できた気がするよ」

「よかったです」私は言った。「それで、ブユ族内の反乱分子の件ですが……」

 そこからは族長の部下が私の部下のヂゲリュツ城責任者に報告するのを横で聞くという形になった。私に警戒心を持った派閥が生まれて密かに陰謀を企んでいたが、族長はそれを粛清し、私と共にブユ族を運営していくことを選んだということが示された。

 全員を処刑したわけではなく、殺したのは一部の過激派だそうな。右手の指が2本無いスエチーが処刑されたのかと思ったら、彼はお咎めなしで処分保留となっていた。証拠を掴まれて彼が処刑されるのはもう少し先の話である。今回、処刑されたのはもっと分かりやすく過激だった私の知らない男だった。

 会議はそれで終了し、族長はドラゴンを見て去っていった。

 キリュ゠チャの緑の鱗は八割に達していたが、そこから先、背中の二割は灰色から色が変わりそうになかった。


 ドラゴンの巣立ちとお別れの日は不意にやってきて、2日後に発つと彼女が宣言した。それにあたって正式な契約書も交わした。ドラゴンの社会にも人間の社会にも通用する立派な書類だ。子供の交換と、その契約が破棄される条件、互いの義務や権利がまとめられた立派な書類だった。署名はペンではなく魔法で行われた。レシレカシ発行紙幣で使われるのと同じ偽造防止の技術である。こういった書類にどれだけの意味があるのか不明だけど、お互いに口約束だけでない方がいいという理解があった。

 パビュ゠ヘリャヅには陽気さがあった。どこに行っても、誰とでも大丈夫だろうという安心感があった。

 代わりにザラッラ゠エピドリョマスの娘となるのはボラキュクケ゠ゼーピーダテマー゠ヴル゠ジャクデズという人懐っこい黄銅のドラゴンで、彼女は特に私になついていた。パビュ゠ヘリャヅに負けず劣らずのお喋りだった。


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