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魔法使いザラッラ  作者: 浅賀ソルト
“評価不定”の2つの自立
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子供が飛ぶ

 リビングには子供たちとネゾネズユターダ君がいた。何か分からないけどふざけあって笑っている。3歳のケテマ゠シソもリビングにいて兄弟を見て笑っていた。

 最初の頃は宮殿とヂゲリュツ城を結ぶハブになっているリビングは落ち着かなかった。しかし徐々に拠点ごとに独立した運営が確立して、転送ゲートも今は私たち家族以外は週に1回とか月に1回といった利用頻度になっていた。

 利用の許可が出ているのは10人近いメイドたちのほか総合管理職の3人だけであとは私の家族のみである。

 ただいまと私が言うとおかえりと返事が返ってきた。

 ソファに座っている7歳のパビュ゠ヘリャヅと目が合い、私は深刻な顔で頷いた。それだけで彼女は何かを察してふざけた顔が消えた。

 彼女の側まで寄って横で膝を曲げた。視線の高さを合わせると、「キリュ゠チャがあなたが欲しいって話は覚えている?」と言った。

 彼女は暗い顔になり、目を伏せて、「うん」と言った。

 最初は彼女にどうするか選ばせるという話だった。しかしいつのまにか私が決定権を持ち、その決定を娘に伝えるということになっていた。これは別に間違いでも勘違いでもない。相談するていだったものが命令になってしまうのはこれに限らずよくあった。

 ネゾネズユターダ君が3歳の娘と5歳の息子を抱っこした。

「ネゾネズユターダ君とも話し合ったけど、この話を受けることにしたわ」口の中が渇き、唾を飲み込んだ。「あなたはドラゴンの娘になるの」

「もちろん『マーカー』は付けるし、ひどい目に遭ったらすぐに呼んで。約束だよ」ネゾネズユターダ君が言った。両脇に子供を抱えた状態だった。

 娘は彼の方を見て、うんと言った。既に涙が浮かんでいた。

「絶対にそっちの方が楽しいわよ」私は言った。若干わざとらしいほど明るい声になった。しかし本心であることに間違いはなかった。

「うん」彼女は言った。私の方は見ていなかった。

 彼女が納得していないのは私にも分かったけど、それでも全部が既定路線なので諦めているのも分かった。

「ここの学校だって、10歳で親から離れたら卒業まで一度も親と会わない子が一杯いるんだし、ちょっとそれが早まっただけよ」

「うん」彼女はうつむき、丸まって寂しそうな背中を私に見せた。

 私は抱きしめるではなく背中をぽんぽんと叩くと、「頑張ってね」と言った。

「うん」

 ネゾネズユターダ君が抱っこしている子供から離れて床を歩き、彼女の側にしゃがむとその背中を抱き締めた。

「さて、あなたたちもキリュ゠チャの子供たちと遊んで仲良くなってね」私は逆に5歳と3歳の子供の方を見て言った。

 2人の子供は私を見てうなずいた。


 それから数日の竜の子供たちの成長は早かった。世話係の2人が交代で夢中で観察していたくらいだ。次の日には自分で餌を食べれるようになり、その次の日には食事をするようになった。食べるのが生肉から調理した肉や魚になったということである。言葉はまだだけど魔法は習わなくても使えるようで、無詠唱の『魔力探知』が頻繁に発動した。私がいると特に多かったらしい。

 キリュ゠チャは子供には古代語で話し掛けていた。これは私たちが引き取ったあとのことを考慮したようで、先にブユや私たちが使える古代語を覚えさせ、あとで竜語を教えるんだそうな。現代は竜語が使えないドラゴンも多いという話をそのときに聞いた。

 そして1週間も経たずに飛べるようになった。

 キリュ゠チャは子供を前脚で掴むと城の尖塔の上に連れていき、その先端に置いた。普通なら崖とか海岸に巣を作りそこで飛ぶ練習をするのだけど、このあたりは山も海岸もないのでそこでするしかないらしい。子牛くらいのサイズになった最初の白いドラゴンはすぐには飛べず、横に並べられて次に黄銅の子ドラゴン、ボラキュクケ゠ゼーピーダテマー゠ヴル゠ジャクデズがめられた。

 塔の先端は2匹で一杯だった。

 屋根と石壁に爪を引っかけて苦もなく貼り付いている姿はやはりトカゲだった。怖くて下りてくるわけではなく上から遠くの湿地帯を見たり北の山を見たりしている。飛ぶ時期というのを理解しているようだった。

 キリュ゠チャは下から見上げていた。

 黄銅のボラキュクケの方が度胸がある。塔の屋根の上から頭を上下させてきっかけをうかがっている。

 私やその他、城のみんなが庭から見守っていた。

 翼が本当に広い。そしてボラキュクケは色が鮮やかだ。まるで黄金である。

「おらっ」と彼女は言った。最初の発話だった。塔の上からふっと落ちると翼を広げた。その翼に落下速度以上の風が当たっているのが翼の振動で分かった。地上とは違う風が彼女の周りに吹いている。

 落下が止まり、滑空から上昇へと転じ、あっという間に彼女は塔よりも高い場所を飛んでいた。

 地上の人間たちが、「おおー!」とどよめいて拍手をした。指笛を吹く者もいた。

 ボラキュクテはその歓声に反応してくるっと上空を旋回した。地上を見て笑っていた。ドラゴンなのに表情が分かった。


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