朝の話の続きだけど
助手のアドバイスは頭に入れておいて私は図書館に向かった。最近はついドラゴン関係の本を読んでしまう。といっても竜に育てられた英雄ソヴサビホセの伝説などは退屈ですぐ本棚に戻してしまった。面白いのは竜が近くにいる生活をしていた昔の人々の雑多なエピソードである。こういうのはドラゴンの本ではなかったりするので地域と年代を絞って読みまくるしかない。キリュ゠チャが城にいたここ10年のブユ族の生活もそういうエピソードとして形に残るかもしれなかった。
昼食を摂り、午後も図書館で過ごして、帰りにまた研究室に寄った。ネゾネズユターダ君はいなかった。夕方はまた娘の送迎があるので早退しているから特別なことではない。
「朝の話の続きだけど、あなたの子供も魔力は強い方じゃないの?」
「まだ1歳ですからね。さすがに分かりません。けど、ドラゴンに気に入られる可能性はありますね」
助手のキューリュは元々成績優秀な学生だった。ネゾネズユターダ君と比べても遜色ないレベルだ。親の能力が子供に遺伝するとは限らないが影響がないわけではない。優秀な魔法使いになるのではという期待は高かった。
ちなみに彼女が14歳のときに助手にスカウトしたのでもう12年の付き合いになる。
「自分の子供が竜に声をかけられたらどうする?」
「もちろん応じると言いたいところですけど」彼女は言った。「最近、自分の子供がかわいいんですよね」
「分かる」
「あと、あの子たち、めっちゃ先輩に似てません?」
「似てるね」
「三つ子なのに性格も違うんですよね。不思議です」
「どれか1人を竜にあげろと言われても選べないよね?」
助手は溜息をついた。「選べないというか、どれも駄目というか。そうですね……けど、じゃああげないっていうのもちょっと」
「うん」私は長い言葉は使わずに同意した。このあたりは研究者としての気持ちが共有できているだけでなく、今は母親としての気持ちも共有できている。
「最初はいきなり三つ子って嫌だったんですけど、今はこれでよかったなって思います」
「それはよかった」そして世の中の母親がやるマウントと同じことを私もついやってしまう。「これから2歳3歳と成長していくとまた違う発見があるよ」お前はほとんど育児やってないだろって突っ込みは無しだ。
「でしょうね。まだ喋りませんけど」
「すぐだよ」
それから私はキリュ゠チャの側で寝ている子ドラゴンの光景を思い出した。4つ目はちょっと気持ち悪いが、犬みたいでかわいいといえばかわいい。それにあの子たちもすぐに喋り始めるのだろう。
「これは愛情なのかなあ……」私は呟いた。
「え? なんですか?」
「いや。こっちの話。ドラゴンの子供もかわいいと思ってさ」
「ああ」助手は言った。「愛情なんじゃないですか?」
「そうかもね」
私はそれじゃあねと言って研究室をあとにした。
家では学校から帰った7歳の娘が兄弟と遊んでいた。




