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魔法使いザラッラ  作者: 浅賀ソルト
“評価不定”の2つの自立
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助手に養子の出し方について聞く

 板発条いたばね塔で面会をして家に戻った。まだ子供がいるかもしれないと思ったけど、娘は普通に学校に行っていていなかった。

 ネゾネズユターダ君も送迎で一緒に出ていた。彼が私の側を離れているのは珍しいように感じた。最近は子供も警戒する必要があるとかで送迎には彼も付き添っていたのだけど、その日はなぜか私が避けられているように思った。

 1人で研究室に顔を出した。

 研究室には助手のキューリュがいた。今は『遠隔子宮』の改良と『人工子宮』の開発、そしてドラゴンのように複数の卵子から複数の子供を同時に妊娠する方法を研究していた。1歳になった3人の子供は1人では育てられないのでレシレカシの託児所と私たちの支援を受けていた。

 彼女は私の顔を見て挨拶をし、竜の子供が孵ったそうですねと世間話を切り出した。彼女にも7歳の娘パビュ゠ヘリャヅの養子の話はしていたので、孵化がどういう意味を持つのかは知っていた。

「まだ空を飛べるようになるまでは時間がかかるけどね」巣立ちと共に娘も行くことになっていた。

「どっちの竜の子を貰うんですか?」

「まだ決めてないけど、見た目の感じからは黄銅の子かなあ。ただ、巣立ちまでに全員と遊んでみて相性のよさそうな子を選ぶわ」

「人間の子供と一緒ですね」

「そうだね」私はすぐに図書館に行く気になれず、会話を続けた。「うちの子はドラゴンと相性がいいのかなあ」

「いいと思いますよ。少なくともあの男の子やケテマ゠シソよりはよっぽど」助手は私をじろじろと見た。「迷ってるんですか?」

「まだあの子に伝えてないんだよね。まあ、雰囲気で察してる感じはあるけど」

「で、今日、伝えると?」

「はっきりこれまで言ってなかったから」

「まあ、養子縁組は、直前にハイって里親に渡すのがいいですよ。結局、親から離されるとなったら子供は泣きますから不意打ちの方がいいです」

 そのアドバイスは複数人から聞いた。レシレカシでも南西蛮族でも変わらない。

 助手が言う。「先輩がレシレカシに送られるときはどうでした?」

「そういえばそうだったな。ある日、ちょっと来なさいって呼び出されてそのまま有無を言わさず連れて来られた。しかも転送ゲートを使わなかったな。あれは簡単に戻れないことを分からせるためだったのか」10歳の出来事を思い出した。「一週間くらいは泣いてたかも」レシレカシに着いた頃には受け入れていたが。

「そういうもんですよ。それにうらやましいですけどね。自分だったら喜んでついて行っちゃいます」

 この会話は以前にもしたし、助手以外とも同じ会話になった。研究者ばかりで薄情な傾向のあるレシレカシばかりか、氏族を大事にする南西蛮族ですらそういうことを言った。竜と家族になれるなんてうらやましい、と。

 もちろん、この話にはそういう側面もある。どこから漏れたか分からないが、一部ではもう噂話として話題になっていた。山の魔法使いがドラゴンと縁組をするらしい、と。ブユ族は秘密を守らないのですぐに広がってしまう。

「じゃあ伝えるのは今日じゃなくて、巣立ちの日の方がいいかな?」

「私はその方がいいと思います。『今日からはキリュ゠チャ゠リヘツイブン゠テゾツ゠ノーニューヒャーがあなたのお母さんよ。じゃあね』って」何がおかしいのか助手はくすくすと笑った。「ノーニューヒャーがお母さんってすごいですね。瑪瑙めのう霊廟れいびょうの門前払いの立会人がお母さんか。はははは」

 私もつられて笑ってしまった。

 そして家を追い出されたときのことを思い出した。母親にこの馬車に乗りなさいと言われ、どこに行くのと聞くと、いいところよと答えられた。

 あれがいいやり方だとは思わないな。せめて、親としては羨しいということくらいは伝えたい。私のときとは違うんだから。悪いことをして追い出すわけじゃないし。


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