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魔法使いザラッラ  作者: 浅賀ソルト
“評価不定”の2つの自立
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世界は回る

 次の年、私は今度は女の子の三つ子を出産した。出産といっていいのか分からないけど。やってることは卵を割って中から赤ん坊を取り出しただけである。3人目のメイドもほぼ同時に三つ子を出産した。これで19人。それとまったく関係なく雇っている乳母も出産したので面倒を見る子供は合計20人になった。

 山の下の宮殿はまだ建設中だった。

 私の出産が終わった頃、ヂゲリュツ城に行くと、いつもと違って午前中から“草と風のドラゴン”キリュ゠チャが空を飛んでいて不在だった。

 外に出ると飛んでいる彼女が見えた。いつもより高くを飛んでいた。特徴的なシルエットが点のように小さく見える。ドラゴンの翼は大きい。広げると胴の長さより翼の幅の方が長い。そして尻尾が真っ直ぐに伸び、先端の細い部分だけが揺れていた。いつもの高度なら見えるドラゴンの尻尾の先端にある三方向の皮膜の形が見えなかった。

 午前中の涼しい風が地上にも吹いていた。髪が顔にかかった。

『魔力探知』を知覚した。

 空の彼女が地上の私をちらっと見たような気がした。

 それから小さい竜のシルエットは地上から見えるように旋回した。旋回半径が小さく、かなり無理のある動きに見えた。優雅に向きを変えるとか気分転換とかでやる機動ではなく、鳥や虫が獲物を追うときに見せる限界の能力のような、非常に無理のある急旋回だ。

 まるでここまで回復したと見せるような。

 嫌な予感がして背筋がぞくっとした。

 上空の小さい影はそれから北に向かった。真っ直ぐ。不思議な加速だった。私が見たことないものだった。鳥が飛ぶのではありえない動きだった。目で追う私が顔を上げた角度から、視界に地上の山が目に入る斜めの角度になるまでの数秒間、黒いシルエットは高度を変えることなく翼を動かすこともなくぐぐぐっと加速を続けた。まるでペンで横に線を払うかのようだった。最後には見たこともない速度になっていた。遠い空なので目で追えるけど、それでも私が見た『火球』や『魔法の矢』の魔法よりも確実に速いのが分かった。

 それからドゴッというものすごく大きい音が聞こえた。

 聞こえた頃には、キリュ゠チャ゠リヘツイブン゠テゾツ゠ノーニューヒャーの影は遥か遠くに消えようとしていた。

 音を聞いた城の人間がわらわらと外に出てきた。

 私は北の方に消えていく彼女の影をずっと目で追っていた。

 外に出てきた人間たちも周囲の話を聞いては空を見上げた。

 予想はしていたけど、その日、彼女は城に帰ってこなかった。翌日も姿を見せなかった。

 子供は平日なのでヂゲリュツ城に顔を出していなかったけど、私は長女にそのことを話せなかった。

 その日の夜に3人の男の子のうちの1人——ショラピヤ゠モヨチキョザガヒャブ——とまだ生まれたて0歳の女の子2人——ジテツグフキとラギゼヨボー——の容態が急に悪くなって死んだ。予想もつかず、対処する暇もないくらいあっというまだった。

 キリュ゠チャがいなくなったことは関係ない。

 1人はちょっと目を離した隙に紐にからまって首を吊ってしまい、1人は何もしてないのにベビーベッドの中で冷たくなっていて、もう1人は熱を出したと思ったらそれが下がらずにそのまま逝ってしまった。

 立て続けに起こったので私だけでなく家族全体がパニックになり、細かい出来事はあまり覚えていない。冷静だったのはメイドたちで、それはよく覚えている。寝て起きてを3回繰り返して、3日が経過してやっと落ちついた。狂乱状態から普通に悲しい状態になったという話だけど。メイドたちがいなかったらどうなっていたか分からない。

 子供を亡くしたキリュ゠チャに話を聞いて欲しかった。しかしヂゲリュツ城1階の彼女がいた広間はがらんとしたままだった。

 一ヶ月後、“草と風のドラゴン”は何事もなかったかのように城に戻ってきた。そして6個の卵を生んだ。繁殖期だった。

 なんだそれ。

 私は思わず帰ってきた彼女に怒りをぶつけた。


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