第46話 エレーナと観月
コンコン。コンコン。何度も扉をたたく音にわっちはうんざりしておりんした。
「司令官っ! ご指示をっ!」
「好きにするといいでありんす」
何度目でありんしょう。とっかえひっかえ、指示を指示をと自分で考えることを知らないんでありんしょうか。
あの日以来、ぴかりは表に出たがらない様子でありんして、わっちが日々に追われることになりんした。
何日経ったでありんしょう。レムレス兄さんからお呼びがかかりんした。
「来たね、ぴかりん」
「お呼びでありんすか?」
「ありんす? 何だい、それは? それに髪はくくらないのかい?」
「兄さん、説明いたしんす――」
わっちは、手短に話しんした。
「なるほど。ぴかりんは内に2人秘めているということだね。そして、君は観月。間違ってないかな?」
「そうでありんす」
「なら、あの敵陣での優雅で見事な舞は、君だったのかな?」
「わっちでありんす」
「そうか。君はとても魅力的だ」
兄さんは、わっちの髪を一束掴むと、さらりと零しんした。
「……レオを殺したらしいね? どうするつもりなんだい?」
「……はてさて。どういたしんしょう」
わっちの態度に、兄さんはにやりと微笑みを浮かべておりんした。意味深でありんすなぁ。
「全軍、君に預けるよ、観月。好きなように使ってくれて構わない」
「……面倒でありんすなぁ。解散はできんせんか?」
「あはは、やめてもいいんだけどね。そうなると、魔物が勝手に人間を狩るようになって、人間はいなくなってしまうんだよ。それは、僕が一番困るんだ」
「分かりんした。引き受けるでありんす」
「ありがとう。そうだ、本題を伝えそびれるところだった」
そう告げた兄さんの手の中には、封筒がありんした。
「誰からでありんすか?」
「聖女エレーナからだよ」
エレーナ姐さんが、何故手紙を? 直接会うこともできるでありんしょう。
手紙を受け取った後、わっちは部屋に戻り、封を切りんした。そして、内容を確認いたしんした。
『親愛なるぴかりんへ
明日、あの悲劇のあった南東の森で待っています。
エレーナ・ローゼンタール』
何でありんしょう。リネットのお嬢さんに祈りでも捧げるつもりでありんしょうか?
何にせよ、姐さんには世話になりんした。行かない選択はないでありんす。
◇◇◇
左っ! 右っ! キィィィンッ!
南東の森に着いたわっちを待っていたのは、姐さんではなかったでありんす。
そこで、待ち構えていたのは、王国軍でありんした。数えてざっと100以上はおりんすなぁ……
姐さんと会うだけと油断していたわっちは、明智鎧の満たさずに来ておりんした。
「……はてさて。どうしたもんでありんしょう」
火の玉が何個も飛んで来んした。わっちは避けんした。そこへ剣撃が襲いかかりんした。それも避けんした。
同士討ちを狙おうにも、遠くから放たれる魔法が邪魔で上手く行きんせん。
ザシュッ! わっちの後ろで音がしんした。
「司令官、援護します」
そこには、以前も助けてくれた猫の姿の魔物と数名が立っておりんした。そして、各自が飛び出すと、敵を殲滅していきんす。
「助けられたでありんすなぁ……」
気付けば、敵は全滅しておりんした。
「ご無事で何よりです」
猫の魔物がそう告げんした。他の者たちも一斉に頷いていたでありんす。彼らに護衛されながら帰路に着いたわっちは、1つの疑問が生まれんした。
何故、待ち合わせ場所に姐さんではなく、王国軍が待ち伏せておりんしたのか――
まさか……姐さんの謀でありんすか? いや、そんなはずはありんせん。
あの心優しい姐さんに、そのような真似は似合いんせん。たまたまでありんすな。
「今後は、我々護衛隊を常に連れて歩いてください」
物思いに耽るわっちは、いつの間にやら魔王城に到着しておりんした。そして、猫の魔物、名はアドルフがそう告げんした。
「分かったでありんす」
◇◇◇
明くる日。
「こんにちは、ぴかりん」
自室の扉を開いた先には、エレーナ姐さんの姿がありんした。
「手紙は読みんした。待ち合わせ場所へも行ったでありんす。姐さんはどこにいたでありんしょう?」
一瞬、考え込んでいた様子だったでありんすが、思い出したようでありんした。
「観月さんね。だから、髪を下ろして……久しぶりだね」
「そうでありんすな。いつぶりでありんしょう?」
「王宮で泣いた時以来かな?」
「そんな事もありんしたなぁ」
「昨日はごめん。急な公務が入って」
「そうでありんすか」
やはり、たまたまでありんすな。
「もう一度、一緒に南東の森に行ってもらえないかな? リネットに花を供えたいの」
「もちろん、いいでありんす」
「ありがとう。明後日でお願いできる?」
「分かりんした」
「それじゃ、わたしはレムレス様とお話があるから」
姐さんはレムレス兄さんに惚れたでありんしょうか。美男美女で、まるで浮世絵の如きあり様でありんすなぁ。
◇◇◇
2日後のことでありんす。南東の森でわっちが見たのは、セスのお坊ちゃんと王国の軍勢でありんした。
「ぴかりん……次はないと言いました。残念ですが、ここで終わりにしましょう」
「ここは、我々にお任せをっ!」
アドルフたち護衛隊が、先行して戦い始めんした。




