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第39話 やるしかない

 薄型スマホ大の魔導ビーコンが完成した頃、部屋にノックが響く。咄嗟に魔導具をベッドの下に隠す。


「ぴかりん、元気にしとったか?」


 ミラちゃんの訪問だった。何もなければ素直に嬉しい訪問だけど、タイミングが悪い。


 ミリオネルが師匠なら、あたしに探りを入れるために来たのかもしれない。


「何や、いつもと雰囲気違うやんけ。どないしたん?」


 どうしよう。とりあえず、まだ未確認の師匠の件だけ確認しよう。


「ね、ねぇ、ミラちゃん」


「何や?」


「ミラちゃんの師匠って……ミリオネルだったりする?」


 口にしちゃった。違うって言ってお願い……


「せやで」


 ガーン。あたしは、マジで撃沈した。


「師匠が何か絡んどるんか?」


「あ、あー、えっと」


「絡んどるんやな。うちは何も聞いとらん。会うてもおらん。それに――」


 何だか寂しそうな目をしている。


「簡単な話、合わんのや。うちはエレーナを守れればそれでええ。せやけど、師匠はちゃうかってん」


「そうなんだ……」


 話そうかどうしようか。


 でも、今更ミラちゃんを疑うのもおかしな話だよね。ミラちゃんに裏切られたら、運がなかったと諦めよう。


 それに、今まで過ごした時間は嘘じゃなかったはず……


 信じよう。


「実は、レムレス様からミリオネルの内偵調査を頼まれてるんだ」


「内偵? 何でやねん」


「人間側と内通しているらしい」


 あたしのその言葉に、ミラちゃんは黙って考えていた。


「……あり得る話やな。あの爺さん、聖女にやたらこだわってたんや。エレーナのことも聖女から早く下ろせと急かされたんや」


「え? そんな話があったの?」


「せや。せやから、うちは旦那に頼んで王国に戻ってエレーナの側にいたんや」


「そうだったんだ……」


 テーブルにつくことを促して、向かい合って座る。


「あの爺さん、長いこと魔王軍におるから、権力や派閥はとんでもないことになってんねん」


「あー調査してて感じたよ。レオも動かしてたしね」


「レオに会うたんか? よく無事でいられたやんか。うちは、あいつだけは無理やねん」


「前線でこき使われたよ、あはは」


 この感じ、ミラちゃんはほんとにミリオネルに言われて来たんじゃなさそうで、ホッとした。


「うちなら、あの爺さんの懐に入れるで?」


「え? 師匠じゃないの?」


「魔導具作りの師匠ではある。せやけど、人生の師匠やないし、エレーナを狙っとる輩や。うちにとっては敵や」


「なら、これをミリオネルにバレないように付けて欲しい」


 あたしは、魔導ビーコンを見せる。


「何やねん、これ」


「簡単に言うと、発信機。付けてくれれば、あたしには、常に居場所が分かるんだ」


「あんた……天才だと思っとったけど天才か。せやけど、少しデカないか」


「それが問題なんだよね……お願いできる?」


「……ええで。方法を思い付いたわ。明日なら、空き時間をぎょうさん作れる。その間で爺さんに付けたるで」


 差し出された手に魔導具を渡す。


 ほんと、バレないようにするのは難しいサイズだけど、大丈夫かな? 受信機は更に大きいから持ち歩くのが大変なのがネックだね……


 ミラちゃんが立ち去った部屋のベッド下から取り出した受信機を見つめながら、ミラちゃんの成功を願った。


◇◇◇


 翌日の午後のことだった。


 受信機が反応を始めた。発信機から発する電波を受信して、距離と方向を示す。まだ、魔王城の内部にいるようで、発信元は近い。


「ミラちゃん、ほんとにやってくれたんだ」


 もちろん、まだこれが罠である可能性も捨て切れない。だけど、そんなに疑っていては前に進めない。あたしは信じる。そして、監視を続けた。


「上手く持ち運ぶ方法を考えておかないと……」


 一番スタンダードに行くなら、バックパックだよね。てか、それが一番かな。


 材料室で強度のある布を貰い、魔石を叩き、魔石粉末にして、魔力注入で風魔力を注入した。


 それを布に縫い付け、最終的にリュックサックに仕上げる形。エレーナ様の変装コス以来の裁縫に腕が鳴る。


 完成すると、やたらと大きなリュックサックになってしまった。背負ってみる。


 重さは感じない、さすが風魔力。見た目だけ怪しいけど、ミラちゃんがありなんだから、大丈夫だよね。


◇◇◇


 翌日、出撃命令が下る。命令の主は、レオ。裏では、ミリオネルが糸を引いていると考えられる。


「おう、新入りっ! 今日も派手にぶちかまして来いっ!」


 戦闘命令は早く終わらせれば、早く帰れることを知ったあたしは、目標を確認してさっさと済ませようと向かう。しかし、今度の相手は――


「セス、さん……」


 怒涛の勢いで、魔物たちを次々葬り、見たことのない強さを誇っているセスさん。さすがは勇者、伊達じゃない。


 なんて言ってる場合でもなく、あたしは選択を迫られている。セスさんを殺すか、それともシルフズメイクの時のように、レオを消すか。


 でも、毎日、殺し合いの中で生き残り、頂点に立つレオを簡単に殺せるの?


 自信がない、でも今は死ぬわけにはいかない……


「ごめんなさい……セスさん……」


 あたしは、指示通りにセスさんのいる戦場に照準を合わせる。射程ギリギリの位置。


 だけど、発射すれば戦線はかなり押し返せる。帰ることの許される成果にはなるはず……

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