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妖精の森編『大蛇と龍と群青世界』

夏休みだー。

 イブル・クゥエート大森林、通称妖精の森。


クゥエート大陸の北と南を分け隔てるこの森林は動物が一切生息していない。


上は龍から下はゴブリンまでと、とにかく魔物しかいないという独特な生態系、地形がいり組んでいて一度入ると簡単には出られなくなるという特性。


そういった理由から、トアール王国では妖精の森に続く隣接面は城壁に阻まれ、城の中からしか出入りする事が出来ない場所となっていた。


そして、もうひとつの問題。


この森は、南側に位置するトアール王国率いる人族至上主義国家〘聖陽連盟〙と、北側に位置する、ホボロフ=ギャトニル・キュトゥル・イシュ・コウレンを国王とする獣人国家コウレン国の種族差別問題で起きた戦争。


その緩衝地のような役割になっている場所だ。


そのため、トアール王国やコウレン国に行く行商人などは此処を通る事はせず、船、もしくはこの大森林の東に連なっているイブル山脈を1週間程かけて山越えすることが一般的である。


「……どこじゃぁここはぁぁぁぁぁぁぁー!!」


そんな場所にバカが1人、絶賛迷子中であった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


【英輔視点】


「何処だここはぁ〜……」


もり。もり。もり。

何処も彼処も見渡す限りの緑一色(リュウイーソー)である。

……群青世界も程々にしとけよこの野郎!

自然は目に優しいけど、足には当たり強いよ?

歩きにくすぎだよ?ふくらはぎ取れそうだよ?


「はぁ……」


いや、最初はまだ良かった。

刀衣の居場所が何となく分かるから道も分かってたし、何より、異世界きたっ!ていうお楽しみ要素があったからな?


それなのになんなの?


途中で刀衣の居場所が分からなくなるわ、崖に落ちかけるわ、魔物に追いかけられるわ……


極めつけは……


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

名前:グランドドラゴン


 種族:龍種  年齢:2620 職業:森守


 Lv:65 HP:20800 MP:5500 SP:11000


 STR:16500  DEX:3030  CON:15000


 POW:2003 INT:18510 DEF:1400


ーーー【アーツ】ーーー

〔思考加速︰3〕〔龍力︰6〕〔生物学︰7〕〔教育︰5〕〔語学︰3〕〔噛技︰8〕〔寝技︰8〕〔跳躍︰3〕〔思念︰8〕〔統治︰4〕〔地魔法︰9〕〔生命超再生︰6〕〔魔力超回復︰2〕〔物理耐性︰5〕〔魔法耐性︰2〕〔精神無効〕〔天地無双︰5〕

ーーー【スキル】ーーー

〔深緑魔法︰8〕〔解析︰8〕〔生命超越︰10〕

〔道教真理︰10〕〔豪腕開成︰10〕

ーーー【メダルスキル】ーーー

(ヴァイゼ)の賢者(ウォンヴァルト)

ーーー【勲章(メダル)】ーーー

《妖精の森の賢龍王女》

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


『おっ。どうしたんじゃ?妾をそんなマジマジとみおって。はっ!もしやお主……惚れたか!』


「ちゃうわ!龍に惚れるわけないだろうが!」


『またまたぁー!そんなこと言って妾のないすばでぃーに興奮しているんじゃろ?隠さんでも良いぞ?かっかっか!そうだ!惚れたといえばな!昔リュカがリントウに、あ!リュカとリントウというのは妾の竜仲間でな。あ奴等は本当に……』


うぜえええええぇぇぇぇぇぇ!


そう。1番の災難は超話が長いうえに超強い龍に絡まれたことだ!


最初は楽しかったし、魔物からも助けてくれたがかれこれ2時間以上は話っぱなしである。いや、異世界の知識が増えていいんだけども!

マシンガントークもびっくりの物量で話してくるから!

話題が尽きる様子ないからこの龍!

難しいアニメ曲かよってぐらいの速さで話してくるからね!


『無視するでないわ!ニンゲン!聞いておるのかおい!』


「……キイテルヨー。」


『おぉ。そうかそれならいいんじゃ……それでな!闇龍の奴がな……』


oh……Jesus……まだ続くのかよ……


過去回想編を無限に始めてしまった龍を横目に見ながら、どうしてこうなってしまったのかを考えていた。


こんなことになってしまった発端は3時間ほど前に遡る。



……今回はネタ切れなので妙な過去編はないんだ……期待していたみんなすまんな!



俺が森に入ってから30分ぐらいたった頃だろうか?最初は道も安定していて、その時は大まかにだが刀衣の位置も分かってたんだ……



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「へー。これが異世界の森かー!思ってたのより普通だな!もっと触手とか生えてる植物が大量にいると思ってたわ。」


かれこれ歩いて30分ぐらいがたった。

森って歩くのが難しいって聞くし普通だったらそろそろ足が痛くなったりしてるだろうけど、ステータスのお陰か歩くのが楽だわー。


林間学校とかの時に欲しかったなぁステータス。

小学校の時に登らされた山道で派手にこけたことは今でも鮮明に覚えているよ。

ていうか、なぜ小学生に山登りをさせたのか不思議でならないんだが?もっとピクニックとかあったろ!


「空気が美味しいなぁ」


でも変わり映えしないから暇だなぁ?

まぁ、日本にいた頃はこんな森になんて入ったこと無かったし、新鮮っちゃ、新鮮かな?

小学校の時に山登らされはしたけど。


なんか、日差しが暖かくて、昼寝したくなるね!

ふかふかの柔らかい草の上で寝転んで寝てみたい!

でもあれめっちゃ汚れそう!やっぱりやめた!


なんてことを考えながら歩いていると、不意にぐにゅっとしたなにかを踏む感触が足から伝わってきた。

なんというか、でっかいグミみたいな感触だった。

でっかいグミを踏んだことは人生で1度もないから憶測にはなってしまうのだがな!


「なんだこれ?」


俺はその踏んでるものから足をどかす。

ちょうどいい具合に横にある茂みに続いているようで、その先端の部分を踏んでしまったようだ。

足をどかしてみると、それは一見して根っこみたいなものであった。


より詳しく説明すると、根っこといったものは濃い緑色で、俺が踏んでいたであろう部分は余程強く踏んだのか、靴裏のあとがくっきりと残っていて凹んでいた。


その大きさは、踏んでいた部分は金のビ〇ーの缶コーヒーぐらいの大きさだが、茂みの方に行くにつれて円錐状に大きくなっているのが見て取れた。


「……変な感触の根っこだな?…よし!こういう時こそ鑑定様の出番だぜ!」


もしかしたらすごいやくそうかもしれない!

そんな期待と暇を潰す気持ちで鑑定をかける。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

名前:ヴァルトバイパー


 種族:蛇種  年齢:102 職業:ーーー


 Lv:13  HP:800  MP:560  SP:200


 STR:600  DEX:300  CON:500


 POW:500 INT:200 DEF:100


ーーー【アーツ】ーーー

〔噛技︰5〕〔生命再生︰3〕〔蛇鱗︰2〕〔毒牙︰8〕〔毒耐性︰5〕


ーーー【スキル】ーーー

〔毒魔法︰3〕〔生命︰5〕


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「……う゛ぁると……ばいぱー?」


その声に反応するかのように、近くから、ズズズと何かを引きずるような音がする。


足元にあった根っこの様なものがうねうねとうねりながら茂みに入っていく。それを眺める俺。

その時の顔は、傍から見るとすごく滑稽な表情をしていたかもしれない。要はアホみたいな面をしていたってことだ。


そして、突然頭上が暗くなった。

俺の体を覆い隠す程度の大きさの影を出すものが、俺と太陽の間に入ったのがわかった。


俺は顔を青くしながらゆっくりと、顔を上げる。

見たくはないが見らずにはいられなかった。


そうして、青い顔をあげた先には、その体長が自分の3倍くらいある蛇が俺を見ていた。


木の間からすごい目でこちらを見ていた。


もしかしたら睨まれてるのかもしれない。

いや、もしかしたらというか十中八九睨んでいたかもしれない。

俺はぎこちない動作で蛇を見る。


「こ、こんにちは〜…あの〜、怒ってますか?」

「キシャァッッーーーーーーーーーー!」


「ですよねぇ!怒るに決まってますね!」


見るからに激怒した巨大ヘビがすごい形相で睨んでくる。

チビりそう!すごくチビりそう!始めての殺気!

だが、そんなこと言ってられねぇ!

こういう時にやるべき事は1つ!


「……三十六計逃げるに如かずだ!あばよとっつぁん!」


すぐさま森へ走り出す。

戦う?だめだめ!あんなのプチってされて終わりだよ!

俺がステータスで勝ってるのINTかDEFぐらいだぞばーか!


「キシャァアア!」


俺が不意打ちで走り出した事に怒りを感じたのか、大きな鳴き声を響かせてしゅるしゅると動き出す音が聞こえる。

巨体ということもありあまり速くないということを期待したのだが、音が真後ろで聴こえるのを考えるに、やはりDEXという数値が同じ以上、動く速さは同じなのだろう。


「シャァ!」


そんなことを考えてる間も背後からはズシンズシンと木々をなぎ倒す音が聞こえてくる。

STR600って、比較的細い木ならすぐに倒せるぐらいの力なのか!だとすると異世界人こっわ!トンデモ集団じゃねぇか!


「うわっ!」


なぎ倒された木が、自分の走っていた隣に倒れた。

危ねぇ……潰されなくてよかった……!

余計なこと考えたら死ぬわ!走ることに集中しないと……!


「シャァア……!」


後ろ確認したいけど、ステータス的に後ろ確認なんてしたら追いつかれる!脇目も振らず全力で走らなければ!


だって多分木が邪魔になって相手の速度が落ちてるお陰で追いつかれてないだけだぞこれ!

相手の方が森を知っている分、有利だと思うし……相手のDEXが同じ300で助かった!

あー!まだ死にたくねぇ〜!


「はぁ!はぁ!」


そうやって何とか追いつかれないまま森を奥へ奥へと進んでいく。

追いつかれもつきはなしもせずの距離感が続く。

俺は10分間以上の間全力疾走し続けていた。


「はァ……ひゅー……はぁ……ひゅぅ……!」


ひゅうひゅうと荒く息の吐く音が聞こえ、足がもつれそうになる。こんなにギリギリになるまで走ったことは無かったから、あまりの肺の痛さに驚いて足が止まりそうになった。


そうして体力的にも限界が近づいてきた頃、急に視界が開ける。

木々に遮られて陽が当たっていなかったため、突然の明るさに目がチカチカとする。そして、その先には……


「!やべぇッ!崖だ!」


急に現れた崖にスライディングみたいにズザザッと音を立てながら止まる。

足が乗っている先の地面がパラパラと崩れる。

足一個先は、深い深い闇を溜めた、漆黒の谷底。

目が慣れるまで少しの時間がかかったため、ほんとに崖ギリギリのところでようやく止まることができたようだ。


「はぁ……はぁ……どうすれば……!」


向こう岸ははるか遠くにあり、頑張ってジャンプしても届くことはないだろうことが分かる。

目視で凡そ100メートルはあるかもしれない。いや、もっとあるか?

どちらにしろ助走がつけられないこの状況では、たとえ強いステータスがあったとしても届くことは難しいだろう。


「はぁ……はぁ……!どうする!どうする!」


後ろからはこちらに向かってくるズシンズシンと音が響いている。そちらを振り向くと、砂埃を上げながら木々を薙ぎ倒しているものが、どんどんと近寄ってきているのが見て取れた。


絶体絶命大ピンチだ!


前門の崖、後門の蛇。どちらに行っても死ぬ未来しか見えん!


「キシャァーーーー!」


そうこうしてるうちに、蛇が木々を薙ぎ倒し、崖近くの開けた場所へとやってきた。

俺を見つめながら、舌なめずりをするその姿は、今の俺に恐怖を植え付けるには十分だった。


「く、来るな!」


……終わるのか?こんな異世界転移してイキって外に出て死ぬ陰キャオタクみたいな死に方をするのか?

くそっ!自分でいってて当てはまりすぎて悲しくなる!

こんな時ぐらいもっとちゃんとしたことを考えられないのか俺は!


「くっ……!」


俺は近づいてくる蛇と少しでも距離をとるために崖側へジリジリと近寄っていく。

蛇は俺が落ちるのを良しとしてないのか分からないが、ゆっくりと近づいてくる。もしかしたらなぶり殺しにしたいのかもしれないが……時間が稼げるならそれでもいい!

まだ、きっとなにか……!


「……!」


だがそれも少しの時間稼ぎにしかならなかった。

俺の足が端っこまで行き崖の先端がさっきよりも多くパラパラと崩れた。谷との距離はもう既にゼロに近いものとなっている。

眼下には、先程見ていた漆黒の闇。より近くまで来て分かったが、それは本当に深く、落ちたら助からないであろうことが伺えた。

これ以上は……行けないな。

いつの間にかこれ以上行ったら落ちる所まで来ていた……これは、不味い。


「シャァァア……」


追い詰められた俺に対して蛇がらんらんと目を光らせながら口を開く。白い唾液が口を開ける時にぬらぬらと糸を引いた。


見せつけるように空けた口の中には、ギラギラと鋭い真っ白な歯が沢山生えていた。

まるで、今から食い殺されるものはこれだと言わんばかりの行動。きっとこいつは、楽しんでいる。


「あぁ……」


ゆっくりと近づいてくる、絶望。

己の弱さ故、この圧倒的な強さの前に食われるのを待つしかできないという、絶望。

俺の頭の中では、今までの楽しかった思い出が、粛々と流れて消えて、頭の中を駆け巡っていた。


「シャアァァァァア!」


そしてその歯が、ついに眼前まで迫ったその時だった。


ゴゥッッッッ!


瞬間。凄まじい風と共に目の前にあった蛇の巨体が消え去る。


「え……なにが……?」


目の前にあった醜悪な絶望は、一瞬のうちに、目の前から姿を消した。

後に残るのは蛇が這いずったあととその後ろに見えるなぎ倒された木々の数々。


訳が分からず周囲を見渡す。

何も無い。


俺がそんな光景に呆けていると、頭上が暗くなり、びゅうびゅうと風をきる音が聞こえてきた。頭上にできた影にトラウマが刺激されて、少し肩が揺れる。


しかし、現れたのは


『大丈夫じゃったか?人の子よ。』


綺麗な緑色の躯をした、雅というのはこういうのかと思わせるような美しい龍の姿だった。




あとがきなし!

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