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十一話

 地下三階をひたすら駆け巡った末。俺達にとってとびっきりのイベントが舞い込んできた。


「こ、これは!」


 俺は驚きを隠せなかった。思わずそれに近寄って震える手で触る。

 鈍色に輝く色に艶のある光沢感。何より左右対称の装飾に冒険者を誘惑させる錠前付きの箱。

 つまるところ宝箱だ。念のためブックにも見せて調べてもらう。


『……間違いなく宝箱だ』

「だよな! こんな所で見つけられるとは……」


 思わず興奮してしまう。きっと中には素敵な物が入っているに違いない。

 鍵が無いので長剣で無理やり錠前を壊し、早速開けてみようとするとブックが光った。何か言いたいらしい。


『空けた瞬間に爆発とか、ありえるかもしれんぞ』

「罠か……。って! それなら長剣で叩いた時点で爆発しないか!」


 そういう大事な事はもっと早く警告してくれ。遅すぎるだろ……。


『もしかしたら空けた瞬間に高電撃が……とか、どうだ?』

「いやいや! 何だよその高電撃って……」

『くらうと灰になる楽しい罠だ』

「楽しくないわ! 灰ってなんだよ! 形すら消えちまうのかよ!」


 恐ろしすぎるわ!

 しかし、そんな話をされると逆に開けずらくなるな……。

 仕方ないので挙手を取ることにした。


「宝箱を空けてみたい奴はこの中にいるか?」


 俺が声をかけると、ロゥーパ達が触手をピンッと伸ばして答えた。

 まさかの開けたい奴がいたよ……。まあ、ロゥーパ達なら大丈夫かな。

 一応ブックに開けても良いのか訪ねてみると、『問題ないだろう』と返事が来た。

 けどな、その『だろう』発言が怖いんだよ……。

まあ、折角の宝箱だ。開けない理由もないけどさ。


 ロゥーパ達は三体で何やらごにょごにょと相談をして作戦会議をし始めた。いやさ、一体だけで開ければ良い事だろ? 何を相談してるんだ?


『最初にして最後の宝箱になるかもしれないからな。慎重なのだろう』

「いやいや、危なすぎるから! そんな事態にしたくないから!」


 ブックはどれだけ俺達を窮地に立たせたいんだ……。


『私は別に窮地に陥りたくて言ってるわけでないぞ。あくまで助言だ』

「そうだな……」

『決して、そういう光景が見たいだけではない』

「見たいのかよ! 余計に悪いわ!」


 見たいだけ勢とか簡便して欲しい。 


 結局ロゥーパ達は三体で宝箱を開けるらしい。

 自慢の触手をびよーんと伸ばして、手始めに宝箱をコンコンと叩いた。

 俺とボーンはというと、少し離れて壁際で様子を見ている。


「まずは叩いて中身を調べてるのか?」

『さあな?』


 それは俺にもブックにも分からない。


 次にロゥーパ達はゆっくりと箱を開け始めた。それも凄まじく鈍い。

 何年も開けていなかったようで、さび付いた音がギィギィと箱からすると、急にロゥーパ達はバタン! と宝箱を閉めてこっちに逃げてきた。


「なんだなんだ? 何があった?」


 俺は何がなんだか分からずにまとわり付くロゥーパ達に聞いた。


『宝箱の異音に驚いたようだ』

「それだけで戻ってくるなら開けたいとか言うなよ……」


 俺もびっくりしちまうだろ……。

 ロゥーパ達も結構怖がりなんだな……。

 仕方ないのでロゥーパ達に「大丈夫だ! ただの音だ音!」と教えてやると、元の位置に戻っていった。一応、開けたい気持ちも強いらしい。


 ゆっくりと箱を開けると、中に何かが入っていたようだ。

 ロゥーパ達が触手で絡め取って、持ち上げる。

それは禍々しくもあり全体的に整った漆黒の鎧一式のようだ。

具足、篭手、胴、兜、それにマントまでついている。全部真っ黒だが……。


 嬉しそうにロゥーパ達がそれを俺の元へと持って来た。

 いやさ……凄く良い物かもしれないけどさ……どうみてもそれ、暗黒剣士御用達の装備一式じゃないですかね……。

 試しにブックに見せてみる。

絶対呪われてる気がするんだが……どうなのよ?


『見事なまでに呪われているな……。破滅の装備一式ではないか?』

「え、なにそれ……」


 今、破滅とかいった? ねえ? 今、破滅とかヤバイ単語でませんでした?


『これを装備した者はいつか破滅するという代物だ。実際にいつ破滅するかは分からない』

「いつかって、いつだよ……」


 とりあえずヤバイ代物だって事は分かったけどさ。


『それが分かれば苦労はしないが……ボーンには似合うのではないか?』


 そういわれたボーンは自分? と、ばかりに指をさした。


「装備してみる……か? 呪われてるっぽいけど」


 呪われている装備を剣士に勧める俺もどうかと思うが、ボーンなら平気な様な気がしてならない。

 ただ、こういう考えが出てくるあたり、俺もブックに汚染されてる気がする。


 骸骨剣士が親指でアゴを触って、考えるような仕草をする。

 そもそも不死だしな……。大丈夫だとおもうが……。


『逆にボーンにもしも、祝福された鎧が手に入ったら装備させるのか? 一瞬で消えそうな気がするぞ』


 そりゃ、そうかもしれないけどさ……。


「不死だけにって言いたいのか? もしかしたら聖なる骸骨剣士が出来るかもしれないじゃないか」


 それも、ありえないと思うけどな……。


『……なるほどな、それもまた面白そうだ』

「いやいや、勝手にボーンを神格化させようとするなよ。絶対にヤバイだろ。聖なるなんとかって……。実際手に入るかわからないけどさ」

『案外手に入るかもしれないぞ? ここは迷宮だからな……。何が起こっても不思議ではない』

「まあ……そうだけどさ」


 俺とブックがそんなつまらない会話をしてると、いつの間にかボーンが鎧を着込んでいた。


「おお! 結構様になるな! うんうん……いい感じだ」


 思わず声を唸らせる。

 ただの骸骨剣士が暗黒剣士にクラスチェンジした印象を受ける。

 まるで地獄の使いだな……。強そうだ。

 そこでボーンがブックを手にとって俺に見せた。


『似合ッテイルカ?』

「十分! 格好良いぞ!」

『……ソウカ』


 若干照れているようだ。何か最近だが、どんどん人間味が増してきてるような気がするな。これも魔力の影響なのか?


『ソレヨリモ……』

「うん? 何かあったか?」

『既ニ破滅シタ事ガアル場合ハ、ドウナル?』


 あんのかよ! 破滅した事がよ! どう破滅したんだよ!

 流石の俺もどうなるかなんて想像もつかない。

仕方ないのでブックを借りて開く。


『……また破滅するのではないか?』

「またかよ! ってかそれ、絶対適当に言ってるよな!」

『適当ではない! あくまで私の私見だ!』


 人はそれを適当って言うんだよ……。あ、お前は本だったか……。

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