第七話 黒瀬の帰省
連休。
久しぶりの帰省日だった。
女子寮の廊下には、大きなバッグを持った寮生たちが行き交っている。
「小春。」
美咲が荷物をまとめながら声をかける。
「今日は実家帰るんだよね?」
「はい!」
「お母さん迎え?」
「はい!」
「黒瀬先輩も帰省らしいよ。」
その一言で、小春の手が止まった。
「……本当ですか?」
「さっき奈央が言ってた。」
「……。」
小春の頬がゆるむ。
「会えたらいいなぁ。」
午前十時。
三階から
サッカー部の大きなバッグを肩にかけた黒瀬が階段を降りてくる。
その姿を見つけた小春は、ぱっと笑顔になった。
「黒瀬先輩!」
「おはよう。」
「帰省されるんですね!」
「うん。」
「お気をつけて!」
そのやり取りをしていると、寮の下に一台の車が止まった。
運転席から降りてきたのは、黒瀬の母。
「あ、母さん。」
「え。早く降りましょう。
荷物運ぶの手伝います。」
「いい。」
「持ちます!」
「重いよ。」
「大丈夫です!」
「なら…こっちの軽いの。」
「あ。ありがとうございます!」
「ん。」
玄関まで一緒に降りて行くと
運転席から降りてきた、黒瀬の母。
「あら、律!」
黒瀬の横で小春はぺこりと頭を下げた。
「はじめまして!花井小春です!いつも黒瀬先輩にお世話になっています!」
明るく、はきはきとした挨拶。
黒瀬の母は一瞬きょとんとしたあと、ふわっと笑った。
「まぁ、あなたが小春ちゃん?」
「え?」
「律から名前だけは聞いとるよ。」
今度は黒瀬が固まる。
「……言ったっけ。」
「言ってたよ。」
母はくすくす笑う。
「『看護科の頑張り屋さんがおる』って。」
小春は耳まで真っ赤になった。
「そ、そんな……!」
親に自分の事を話しているのだと知り、
嬉しく照れてしまう小春。
美咲が玄関からその様子を見て、小さく笑った。
「もう新婚さんじゃん。」
隣の寮母さんも頷く。
「あの子たち見てると和むねぇ。」
荷物を積み終えると、黒瀬の母が小春に声をかけた。
「小春ちゃん。」
「はい!」
「今度、うちにも遊びにおいで。」
「えっ?」
「律も喜ぶけん。」
黒瀬は少しだけ困ったように頭をかいた。
「急に言わんで。」
「いいやん。」
小春は目をぱちぱちさせる。
「ほ、本当にいいんですか?」
「もちろん。」
「ありがとうございます!」
その笑顔に、黒瀬の母も思わず笑顔になる。
「可愛い子やねぇ。」
車が走り去るまで、小春は何度も大きく手を振った。
黒瀬も窓を開け、小さく手を振り返す。
車が見えなくなっても、小春はしばらくその場を動かなかった。
「小春。」
美咲が隣へ来る。
「帰ったよ。」
「……はい。」
「寂しい?」
「はい。」
「たった数日だよ。」
「長いです。」
美咲は苦笑した。




