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先輩しか見えない  作者: ももたろう


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第二十八話 ハプニング




翌日。



黒瀬の部屋。


黒瀬は床でストレッチをしていた。


ベッドに座り、スマホをいじっている奈央。




「奈央。」


「はい?」


「昨日は部屋ありがとう。」


「いえいえ!パーティー楽しかったですか?」


「楽しかった。」




昨夜、奈央は、


先輩たちのパーティーを邪魔しないようにと


隣の部屋に泊まりにいっていた。




そして、奈央は思い出したように



「今日、小春ちゃんから


 サッカー部1・2年生、全員、


 ミサンガ貰いましたよ。」



「うん。手作りだって。」



「器用ですよね!


 みんな早速、付けて練習してましたよ!」




そんな話をしていたら





コンコン。



「こんばんはー。失礼します。」


開いたドアからぴょこんと小春。




「あ!小春ちゃん、ミサンガありがとうね!」


ミサンガの礼を言う奈央。


「いえいえ!」


「みんなめっちゃ喜んでるよ!」


「良かったです!」




黒瀬は突然やってきた小春に問う。


「どうした?」





「昨日、先輩の部屋にヘアゴム忘れちゃって……」



「机の上」


黒瀬が指さす。


「ありがとうございます!」




小春は嬉しそうに机へ向かう。


その瞬間。



ゴン。


床置かれていたダンベル。


毎度おなじみの犯人。






「きゃっ!」


つまづいて体勢が崩れる小春。






「危ない」


黒瀬が反射的に腕を伸ばした。


小春の腰を支え、引き寄せる。


しかし勢いは止まりきらず、


二人の顔が急接近する。










ちゅ。







ほんの一瞬。



唇が触れた。




部屋の時間が止まる。






「…………」




小春の目が丸くなる。


黒瀬も固まる。


奈央も固まる。





誰も動かない。


誰も喋らない。


三秒。


いや、もっと長く感じた。





最初に我に返ったのは小春だった。


ぱっと離れて、


「すすすすすみません!!」


顔を真っ赤にして頭を下げる。




黒瀬も少しだけ目をそらし、


「ん。」


と短く答えた。


耳だけ、ほんのり赤い。






奈央は二人を交互に見る。




(…え)


(今)


(え???)





頭の中が真っ白だった。




小春は机のヘアゴムを取り、


「じゃ、じゃあ部屋戻りますね!」



「うん。」





いつも通り。


本当に、いつも通りの会話。



「失礼しましたー。」


小春はぺこりと頭を下げて部屋を出ていった。




ドアが閉まる。


静寂。




奈央はゆっくり黒瀬を見る。


黒瀬は何事もなかったようにストレッチを再開している。




「先輩」


「ん」


「今…」


「ん」


「…キスしてました?」


「事故や」



「……」


「……」




奈央はまだ理解できない。


普通なら気まずくて目も合わせられないはずだ。


なのに二人とも、恥ずかしそうではあるけれど、逃げもしない。




いつも通りだった。




奈央は思わずベッドへ倒れ込む。




奈央は口をぱくぱくさせた。







その頃、廊下では。





「はぁぁぁぁぁぁぁ……」


ドアの向こうで、小春がしゃがみ込み、真っ赤な顔を両手で覆っていた。



(また…先輩と……)


(き、キスしちゃった……)



(…ドキドキが…止まらない…)





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