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先輩しか見えない  作者: ももたろう


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第二十話 放課後、公園で…




放課後。


看護科の実習が早く終わった日。


小春は特に予定もなく寮へ直帰。


部屋に着くと


同室の美咲はまだ帰ってきていない。


そのまま床にごろんと転がる。



「今日することなーい。」









その頃。


サッカー部の練習は軽めの調整日。


黒瀬はグラウンドの隅でストレッチ。


いつもより早く部活が終わった。



脳裏に小春が浮かび、

黒瀬は寄り道をせず、寮へ。




黒瀬は迷うことなく

二階へ上がり、小春の部屋へ。







コンコン。





「はーい。」



黒瀬がドアを開けると



床に寝転んだままの小春。



少し驚いて、目を見開く黒瀬。




小春は黒瀬と目が合い、


部屋に来た人物が黒瀬だと認識した。



その瞬間。


バッと起き上がり、


油断して無防備な姿を見られた小春は


恥ずかしさで慌てふためく。




「……っ!」


せ、先輩!!!!


おかえりなさい!!」





ふっと笑う黒瀬。


「ただいま。」





「先輩から来てくれるなんて。


なにかありましたか!?」




「時間ある?」



「はい!」




「散歩…いかん?」




「行きます!!」


脊髄反射で返事する小春。








二人は寮の裏の公園へ。



夕日が沈みかけている。


風が少し涼しい。





今では当たり前のように


手を繋いで歩く二人。





この時間でさえ幸せで


ずっとニコニコしてる小春。






黒瀬がぽつりと言う。


「…なんか」




「?」


黒瀬を見上げる小春。




「小春とおると、変。」


「変?」


「落ち着くけど、落ち着かん。」


小春は首をかしげる。


「どっちですか?」


「分からん。」



その正直すぎる返事に、小春は少し笑った。





沈黙。


でも嫌な沈黙じゃない。





やがて小春が言う。


いつものハツラツとした声色ではなく


静かに。


「先輩。」


「ん。」


「好きです。大好きです!」



黒瀬が小春を見る。


「知っとる。」




黒瀬はぎゅっと手を握りかえし、


落ち着いた声で、ゆっくりと。




「…自分も。


小春が好きばい」



一瞬、世界が止まる。



風の音だけが残る。






ただ、静かに見つめ合う二人。





黒瀬は小春を引き寄せ


ゆっくり顔を近づける。



そんな黒瀬から

目を離さない小春。



ゆっくりと互いの唇が重なる。




小春は少しうつむき、真っ赤な顔で、


「…先輩、好きです。」




黒瀬は少しだけ目を細める。


そして、ぽつり。


「知ってる。」






それからは何か話すわけでもなく、


ベンチで二人寄り添い


ただ、ただ、その時間を共にした。






「そろそろ寮戻ろうか。」



「はい。」








その夜。


寮中が妙に静かだった。


理由は簡単だった。





2人から感じる空気。



女子寮・学校共に公認な2人なために


周りの人たちは簡単に気づいてしまう。



「なんか、より一層…」


「絶対なんかあったやん。」


「ご馳走様です…」







その夜。


小春の部屋。



「なんか今日静かだね。」



自分な机につき、壁をぼーっと見てる小春。



(…あれ?聞こえてない??)



「おーい。小春ー?大丈夫かー?」


もう一度、声をかける美咲。



ワンテンポ遅く、


「……は〜い。


 だ〜ぃじょ〜ぶで〜す。…ふふふ」



緩みきった表情の小春から

なんとも緩い返事が返ってくる。




「はい、もうわかりましたー。


あえて何も聞かないでおこう。」




察した美咲は


構わないことにした。








一方その頃。


黒瀬の部屋。


翔子がにやにやしながら言う。


「先輩。」


「ん。」


「なんかありました?」


「別に。」


「なんですかー。勿体ぶってー!


なにも小春ちゃんに手出したとかじゃ


ないでしょうに、教えてくださいよ〜。」




「…した。」




「え?」




「キス。」



「えぇぇぇぇぇぇぇぇえ!!!!」


奈央はベッドから転がり落ちた。



「してた。」



「してたって…。そんな…」



冷静で鈍感な黒瀬から


予想できないエピソードが出てきて



頭が追いつかない奈央だった。




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