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十三話 朝焼けの約束

「あれ?凛さん?」

 次は美代の部屋の前を通ると、美代が丁度部屋から出て来た。

「ね。ね、来て来て」

 そのまま部屋に招かれる。凛は戸惑いながら部屋に足を踏み入れた。

「寝れないの?」

 美代が凛に尋ねる。

「目が覚めちゃって」

「わたしも。でも起きて良かったな。凛さんに会えた」

「毎日会ってるじゃない」

 凛はストレートな表現に赤面しつつ、嗜めるように言う。

「夜中は特別じゃん」

 美代はワクワクしているし、それを隠さない。

「ねぇ、このまま朝まで一緒にいない?」

「寝ないと身体に悪いよ」

「一日くらい、きっと大丈夫」

 二人はベッドに腰掛けて、暗闇の中で見つめあっていた。

「眠くなったら、横になればいいし」

「そうね」

 美代の言葉に、凛は頷く。

「ねぇ、手、握っていい?」

 美代は、凛の目を見つめたまま、そう尋ねる。

 凛は返事の代わりに、美代の陶器のような白い肌の掌を包んだ。

 と、美代はそれを恋人繋ぎにする。ギュッと指を絡め合う。

 振り払うという選択肢は凛にはなかった。

「一緒に朝焼けを見よう、部屋から綺麗に見えるのよ」

「いいね」

 指先から伝わる熱で、身体が絆されてゆく。

 美代の頬は紅潮していた。

「凛さん、寝ちゃう?」

「睡眠薬…飲んだのにな。全然効いて来ないや」

「無理しないで寝てもいいからね」

 美代の声が弾んでいて、可愛いな、と凛は思った。

「美代こそ、寝ていいのよ?」

「うん、眠くなったらね」

「……可愛く、なったね、出逢った時よりずっと」

「へ?」

 凛は掠れるような声で、精一杯の告白をした。

「…嬉しい」

 美代は照れた。

「凛さんに出逢った日から、わたしは救われてばかりよ?ありがとう」

 美代は一つ吐息を吐く。

「だからね…わたし、決めたの…もう二番手なんて、嫌だと思ってた。でも、凛さんとなら、二番手でも良いの」

 ことん、と音がした。告白に必死になっていた美代はびっくりした。

 凛が寝ている。手を握りしめたまま、ぐっすりと。

「凛さん……」

 その寝顔を見ながら、美代もいつしか寝てしまった。

 一時間半後、凛は朝焼けを感じて目覚めた。

 美代から愛を告白される夢を見ていた気がする。

 二人の手は寝ている間も強く握られたままだった。

 朝焼けの美しさに目を奪われていると、モゾモゾっと横で美代が起きた。

「わ!凛さん!おはよう」

「美代、おはよう」

「朝焼け、綺麗だぁ」

 美代が無邪気に起き上がる時に、二人の繋がれた手は離れてしまった。


 ——もう、戻れない。


「綺麗だね」

 そう呟きながら、離れてしまった手をつい、繋ぎ直してしまう。


 ——もう、離せない。


「綺麗って、言ったでしょ」

 そう言い返しながら、繋がれた手を硬く結ぶ。もう二度と、離れないように。


 それから、二人は時間を作っては美代の部屋で逢瀬を重ねた。

 二人きりになると、必ず手を握って、時間がないときはひたすらお喋りをし、時間が許せばそのまま寝てしまう。

 看護師に見つかる日もあれば、主治医の診察に呼ばれてしまう日もあった。

 志摩子と小鳥遊は、二人の変化に気付いていたかもしれないが、何も言わなかった。


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