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十二話 眠れない夜

 小鳥遊は、今度は数時間で病棟に戻って来た。

 途中、眠りから覚めた志摩子も加わって三人で小鳥遊を待っていた。

「すごく綺麗な人だったみたいよ、看護師さんの噂で聞いた」

「加藤さんって言ってたかな」

「ワンチャン、彼女さん、隔離室に入れられたりしてね?」

 三人でああでもない、こうでもないと言いながら待つのは辛かった。

 だから、小鳥遊が普通の表情のまま三人の前に現れた時、それを責めるような空気が三人にはあった。

「よっ。生きてるし無事」

 その不穏な空気を打ち消すように、小鳥遊は挨拶した。

「心配かけすぎ。許さない」

 志摩子は小鳥遊を睨んだ。

「彼女さんは、落ち着いたの?」

「俺の状態知って、やっぱり別れないって言い張るんだ」

 小鳥遊はため息をついた。

「俺には今、俺を支える力しか残ってないから、別れるしかないって何度も伝えたけど」

 志摩子はうんうん、と頷いた。

「とりあえず別れないって言われた。他の女が出来たわけじゃないってことは、理解したみたい」

「そっか。大変だったね」

 小鳥遊は右肩をすくめて、どうだか、と言いたいみたいだった。


 小鳥遊と志摩子が先に部屋に戻って、凛と美代の二人になった。

「彼女さんの気持ちも、わかるから辛いな」

「そうだね」

 昨日の美代の告白を考えれば、小鳥遊ではなく彼女の加藤の方に肩入れしたくなるのは、当然だと思えた。

「恋愛って難しいね…片方の気持ちだけじゃ、どうにもならないはずなのに」

「うん、両方ともの気持ちが大切なのにね」

 二人の視線が絡まる。

「…ねぇ、凛さん」

 美代は凛の手を大切そうに包む。

「美代…なに?」

 こんなに、近くにいるのに。こんなに、好きなのに。どうして口に出せないんだろう。

「……小鳥遊くん、無事で良かった」

「だね」


 その晩、寝付けなかった凛が睡眠薬を貰いにナースステーションに行くと、小鳥遊も同じく睡眠薬を貰いに来ていた。

「三坂さんは、外泊どうだったの?旦那さんと話せた?」

 小鳥遊は、気にしてくれてたらしい。

「話せやしなかったよ、身体で埋め合わせしただけ」

「身体で埋め合わせってエグいな」

 小鳥遊は笑った。

 その笑顔に、凛は気が軽くなった。

「付き合ってる時からそうだったのかも。何か噛み合わない事があっても、抱き合ってる間は忘れられたから」

「なるほどね」

 小鳥遊は珍しく感心したみたいに頷く。

「あながち、間違ってないのかもね、その選択も」

「そうかな?」

 心は叫んでいる。啓介以外の人の名前を、ずうっと呼んでいる。

「一つにはなれるわけだし、間違ってはないでしょ?」

「どうかなぁ。わからないな」

 小鳥遊は眠気が来たかのような大きな欠伸をした。

「ごめん、引き留めて」

「いいって、どうせすぐ目覚める。彼女に追われる夢ばっかり見るんだ」

 小鳥遊は諦め切った表情だった。

「ねぇ…既婚者で子供もいて、今更恋愛なんておかしいと思う?」

 凛は思わず聞いていた。眠気と現実の境目に居たからかもしれない。

 この想いが最後の一線を越える日も、近いような気がした。

「別におかしくないんじゃない?」

 小鳥遊はいつもの飄々とした言い方だ。

「人生何が起こるか、わからんもんさ」

 そう言うと、まるで全てを悟ったかのような表情を浮かべて、自室へ引き上げて行った。


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