Good experience!
先手を取ったのはミナだった。正確にはアインは防御しかできない以上、動く理由がなかっただけである。ミナはイベントのときに自分の攻撃が通ることを学んでおり、迷うことなく【破壊ノ剣】を使用する。
「やっぱりそれは防げないよなー。けど……」
アインはアイテムを取り出すとすぐに使用する。それはHPポーションで、さっきまで風前の灯火だったアインのHPは全回復する。しかし、ミナにとってそれは想定内だった。そのまま【破壊ノ剣・一閃】を使用して、再びアインのHPを1にする。
「うっそ!?そんなのもあるの!?」
どうやらもう一つ同じようなスキルがあったのはアインにとって想定外だったようで、かなり取り乱していが、そこからはミナにとって予想外の展開を迎える。ミナは普段通り、次のスキルを使用する。【破壊ノ剣】で失ったステータス分を攻撃力に変換する【破滅ノ剣】。その剣は真っ直ぐにアインを斬り裂く。だが、アインの残りHPが削れる事はなかった。
「えっ?」
ミナのATKとDEFの合計は10000を超えている。【破滅ノ剣】であれば、大抵のプレイヤーが一気にHPのほとんどを持って行かれるだろう。だからこそ、防御特化とは言えアインに1のダメージも与えられなかったのは想定外だった。
「ミナの【破滅ノ剣】が防御力を無視するように、こっちにも攻撃力を無視する防御があるからね。滅多なことじゃダメージは受けないよ。」
ミナは何とかしてダメージを与えようと思考を巡らせる。そこで思いついたのは【闇門】によるダメージだった。本体のステータスでみればアインの防御は突破できないだろう。それでも【破壊ノ剣】と同じように防御無視のダメージであれば通る、そう考えたのだ。
「起きて、サタン!闇門!」
ミナはすぐにその策を実行する。サタンと門がミナの周囲に現れ、その門から大量の悪魔が放たれる。
「いくら数を増やしたところで……」
アインはそう呟いたところで言葉をなくす。いや、喋ることができなくなったと言った方が正しいだろう。ミナの予想は当たり、悪魔による固定ダメージがアインの残りHPを削ったのである。
「まさかそんなのもあるなんてな。」
倒れた体を起こしアインが嬉しそうに呟く。ここまで自分と相性が悪いプレイヤーを初めて見たアインは、悔しいと言うより新発見で気持ちが昂ぶっていたのだ。
「けど私も【破滅ノ剣】でダメージが通らなかったのはびっくりだったよ。」
「まぁ、それが取り柄…だったんだけどね。固定ダメージには弱いからな。今まではそんなに固定ダメージを使う人と当たらなかったから気にしなかったけど……」
ミナのギルドにはなぜか固定ダメージのような防御無視の攻撃手段を持つプレイヤーが多いが、本来そう言ったものはこの世界にはあまり存在しない。そのため、アインがダメージを受けることも少なかったのだ。
「まっ、今はこうして受けてるわけだし、また新しくその辺の対策も見つけないとなー。いやー、いい試合になったよ。ありがとね!」
「ううん、こっちこそいい体験ができたよ!ありがとう!」
それからまたそのうち再戦をしようということでフレンド交換をし、その場は一旦解散する。ミナは肝心の新しく得た【虚無】を忘れていたことに気づくことなくその日を過ごしてしまった。




