Switching!
「さて、また再開するか。」
ユギンの方は結局PvPのあとも収穫を得ることが出来なかった。そのため一旦ログアウトしてからリアルでの予定を済ませたあとでまた戻ってきたのだ。
「テイムしているプレイヤーも増えきてるな…」
ユギンは周りを見渡してそう言うが、内心ではテイムモンスターにはさほど関心はなかった。いや、それよりも興味深いものを見つけたというのが正しいだろう。それはリアルの方での掲示板サイトにて書き込まれていたものだった。
「確かこの辺りに…」
ユギンが目的地に着くと辺りを見渡す。しかし目的の物は見つからない。
「なにか条件があったのか?それとも…」
付近を探索し始めようとした瞬間なにかに貫かれる感触のあとでユギンは街へと戻された。
「…」
なにが起きたのか分からず思考が一瞬停止するがすぐに目的の物の仕業によるものだということを理解する。とは言え、どうしようも無いのも事実である。
「流石にあれは手詰まりだな。一か八かの案ならあるけど失敗するかもしれないからこれはログアウトの直前に試すとして…とりあえず何回もやられておくか。」
ユギンは最終手段を確実に成功させるためにそれまでの間は情報集めに専念することにした。
刺されたり斬られたりを繰り返すこと14時間。目的の物が攻撃を仕掛けてくるのは毎回同じタイミングであること、方向はランダムであることを学んだ。そしてログアウトしなくてはならない時間も近づいてきたところでユギンは最終手段を使う覚悟を決める。ゆっくりと目的の場所へ向かう。
「これしくじったらきついよな...あと5、4、3、2、1、刀術終部-残-。」
恐らく使うことはないと思っていたユギンの最後の奥の手。黒雷刀そのものを代償とすることで発動できる最凶のスキル。それはまるで-散-をより強力に、より広範囲にしたような物だった。3分間の間、金属が激しくぶつかる音が鳴り響く。実際に試すことはもうできないがサタンの【闇門】の悪魔たち全部をボス級に変えた状態ですら敵うかどうかというレベルの大技。音が止むと約14時間もの間ユギンを街へと送り続けた刀がカランと音をたてて地に落ちる。同時にユギンの黒雷刀は鋒から峰、やがて持ち手も全て塵へと姿を変えた。
「今までご苦労様。」
塵となった黒雷刀を出来る限り集め埋葬する。ユギンの目から僅かにだが涙のようなものが滲み出ていた。
「さて、落ち込むのはここまでにしてこっちを確認するか。」
ユギンは黒雷刀と引き換えに手に入れた刀を確認する。だが、刀を手に取ろうした瞬間予想外のものが目の前に出現した。
〜このモンスターをテイムしますか?〜
Yes/No
「ん?モンスター…?」
てっきり新しい武器だと踏んでいたため思わずYesにすることを躊躇うが無防備よりは断然いいと思い直しYesを押す。
『村雨をテイムしました。』
「村雨…今まで気にしなかったけどモンスターの名前は神話とか伝承とかから来てるみたいだな。ミナのもそうみたいだし。えっとステータスは……」
〈モンスター情報〉
I.名前/村雨
II.矯正
・HP/3000
・MP/0
・ATK/4500
・DEF/500
・AGI/4000
III.スキル
【霧刃】
IV.補足
このモンスターは武器を解除してるときのみ召喚できます。
「矯正…?初めて聞くな。えっと…」
聴き慣れない言葉に疑問を抱くが自身のステータス値からその意味を理解する。
「なるほど。自分のステータスをその値にするってことか。つまりは装備のようなモンスターってことか。モンスターを呼び起こせる条件も武器を解除しているときだけみたいだしな。えっとスキルは…」
【霧刃】
条件:村雨をテイムしていること。
効果:刀身を半径50mに霧として散らす。霧に触れている味方以外のプレイヤーおよびモンスター全てに特定値ダメージを与える。ダメージ量は1秒につき、それぞれの最大HP値の1%。
「前の-残-の火力抑えめって感じだな。けど代償がないのは嬉しいな。単純計算で100秒間触れさせればそれで終わりだからあとはその間どう防ぐかが問題だけど…」
これ以上は今ここで考えても仕方ないとユギンは思いひとまずギルドホームへと戻った。




