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私たちは繭の中  作者: hayase
カタメウオの呪い
7/22

川の異変

ヒロは話の流れを変えようと、シュウヤが釣り糸を垂らした水面を覗き込んだ。


「あれ、」


自身の目に映ったものが信じられなくて、ヒロは瞬きを繰り返した。

けれどもその光景に変化が見られなかったため、今度は右腕で両目を擦った。


「花粉か」


シュウヤは心配気な様子でヒロの様子を伺う。

確かに今は五月で、花粉の飛んでる季節だけれど、あいにくとヒロは花粉症ではない。


「いや。なんか、さ。水面に黒い影がいっぱい泳いでる風に見えるんだけど……」


それを聞いたシュウヤは水面を覗き込むも、そこにヒロの言う黒い影など見えはせず首を傾げる。


「そうか?」


ヒロはもう一度、水面を覗き込んだ。


―やっぱり、何かいる。


奇妙な光景だった。

水面のすぐ下、川の流れに逆らうように何かがいくつもうごめいている。

それらの影一つ一つはそう大きくないようで、細長いもののようにヒロには見えた。


―魚?


気になったヒロはしゃがみこんで、川の水面にそっと左手をつけてみた。

パシャパシャと水しぶきをあげながら、その影の正体に触れようとする。

影は水面のすぐ下を泳いでいるように見えていたが、ヒロはさらに深く、左の肘まで水面につけてみた。しかし、触れる感触は水だけである。よくよく水面を観察していると、影は左腕をまるでないもののように通過していっているように見える。


―変だな……。


そう思った瞬間、ぞわりとした悪寒が背筋を駆け抜けた。


「っ!」


ヒロは素早く水面から腕を引き抜き、大きく数歩後退する。


「ヒロ?どうした」


シュウヤはヒロに駆け寄り、ヒロが呆然と見つめる川へと視線を向ける。


「や、ヤバいかも……」


ヒロがそう言った直後、川の水が大きく波打った。


「なんだ⁉」


シュウヤは驚いて大きな声をあげる。

けれど、それだけでその後川に変化は見られない。


「うーん、片目魚が怒ったのかなぁ」


シュウヤは首を傾げて釣り竿へと近づこうとする。


「まって!」


ヒロはとっさにシュウヤの左腕を掴んで引き止める。


「なんだよ、ヒロ」


ヒロは言えなかった。

今見ているものが現実とは思えなかったから。


水面が波打った直後、人の背丈の二倍はあろうか、見上げるほどに大きな魚がその姿を現したのだ。

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