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私たちは繭の中  作者: hayase
不死鳥
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小さな魔

次の日の放課後。


ヒロは駅でカオルと合流した。


「まず、ナルを捕まえなくちゃ」


きゅっと眉間にしわを寄せながらカオルは言った。

ナルのことそんなに嫌なんだなと思いながら、ヒロは尋ねた。


「電話でもしてみますか?」


スマホを取り出し、ナルの連絡先をヒロは選ぶ。


「あの人、電話とか出るのかな……」


通話ボタンをタップしたヒロをカオルは信じられないものを見る目で見た。

数コールの後、なにぃ?と気の抜けた返事がスマホ越しに聞こえてくる。


「魔に関することで、手伝って頂きたくて」

「ふぅん?魔女の?」

「はい」

「場所は?」


今いる駅の名前を言うと、ナルは大きなため息をついた。


「なんでそんな近くにいるわけ?まぁ行くわ。10分待って」


通話の切れたスマホをポケットにしまい、ヒロは言った。


「10分後に来るそうです」





10分後。

相変わらずチャラチャラととしたどこか軽薄そうな様子で現れたナルは、ひらひらとカオルに手を振った。


「カオルちゃん、おひさー。退魔の依頼なの?」

「原因の排除。退魔は絶対じゃない」


端的すぎるカオルの言葉の後に、ヒロはレディから聞いた依頼内容をナルに伝えた。


「人の言葉を話す魔ってことか。それなら俺を呼んだのもわかるな。わかった。早速その場所に行こう」


ナルは驚いて、小声でカオルに言った。


「えらくすんなりですね」

「そう?いつもこんな感じよ」

「えー、」


この前ナルと取引までして、囮にされたばかりのヒロは信じられないと思った。





その魔は、神社の階段に現れるという。

階段の脇には見上げるほどに高い木々が生い茂っていて、緑の葉が陽の光に照らされている。

とりあえず上ってみようかと軽い調子でナルが言い、石段の階段を軽やかに上がっていくナルの後ろを、カオルとヒロも並んでついて行く。


「今回の魔、そんなに危ないんですか?」

「死人は出ていないんでしょ?」


前を歩くナルの問いに、はいとヒロは答えた。


「なら、大丈夫なんじゃないかな。この前ヒロが会った蜘蛛の魔の方が危ないよ」


藤乃のことだとカオルを見れば、ナルの言葉を肯定するようにカオルは頷いた。

ナルは続ける。


「レディが君たちに代行させている依頼で、それほど危険な魔と出会うことはないはずだよ。それでも俺を呼ぶってことは、何か気にかかることがあるんだと思うけど……。そういや、ヒロのところにその蜘蛛の魔が会いに行ってない?それか綺麗な女の人」


ヒロは驚いて、おそるおそるその名を口にした。


「藤乃さん、ですか?」

「あー。やっぱそうか。もしかして、君たち屋敷にも来た?」

「えっと、はい……」

「派手に動いたね。西條が藤乃に気づいてしまった。このままでは死人が出るよ」

「え⁉」

「西條は式にできる魔を探しているから、強い藤乃を狙って返り討ちされるってことよ」


カオルの言葉にナルが「せいか~い!」とゆるい調子で答えた。

眉間に皺を寄せたカオルは言う。


「あれは人に従う魔ではないよ。前の主人はどういう経緯で契約していたのか……」

「あはは。カオルちゃんにもわかった?藤乃が強いって」


その時、風が強く吹いて木々がざわりと揺れた。


―人だ、人がいる。


声は唐突に聞こえた。


―また来たのか。近寄るなと教えてやってるのに。

―仕方ないじゃん。人ってボクらのこと視えてないんでしょ。

―ほら、お前の出番だ。ちょいちょいっと転ばしておいで。

―うーい


一番前を歩いていたナルの前に、何かが飛び出した。


―そーらよっ


手慣れた手口なのだろう。

ナルの足もとに狙いを定め、小さな魔は勢いよく飛び出して来たのだ。

ナルはその小さな魔を片足で踏みつぶすと、緑札を素早く取り出し、聞こえて来た声の方へと投げつけた。


―ひぎゃっ!

―うぎゃっ!


「で、捕まえたけど?」


カオルはナルの足元を見て言った。


「殺したの?」

「大事な情報源、殺すわけないでしょ」

「そ。とりあえず、上りきってしまいましょう」


カオルはそう言って、ナルを通り過ぎた。

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