カオルへ相談
「で、それはなに?」
放課後、依頼のためにカオルに指示されていた場所に着いたヒロは、さっそくそう彼女に尋ねられた。
「あー、えっとですね……」
口ごもるヒロの後ろには、屋上でヒロのことを脅してきた女の魔がついてきていた。
「なんか、願い事があるみたいで。協力するまで離れないーって。魔女のレディに聞けばいいかなぁと思ったんですけど」
「そんな力が強くて危なそうな魔、ヒロには早すぎる。返してきなさい」
カオルはムッと眉間にシワを寄せて、その女の姿をした魔を視て言った。
人の姿をとれるということは、力の強い魔の証だ。
「なんだ、その人間は」
魔はカオルをじろじろと見ると、ふんと鼻を鳴らした。
「魔女の残りかすか。随分と気配が薄いからわからなかったぞ。東條は後継者不足なのか?」
魔の言葉に、ピクリとカオルの指先が動いた。
カオルは歯をグッと食いしばって、身体の力をパッと抜いた。
努めて表情を出さないことを意識して、被っているキャップ帽のツバを軽く上げ、その魔と目を合わせた。
「魔女への依頼の代行をしているカオルよ。気配が薄くてごめんなさい。おまえたちは鼻がいいから、これくらいがちょうど良いかと思っていたのだけれど」
カオルの好戦的な返答にヒロは驚いて、魔の様子を恐る恐る伺った。
魔はきょとりとした表情をして、次の瞬間カラカラと笑った。
「そうか、魔女の代行者よ。威勢がよくて良い。だが用のあるのは魔法使いだ。魔女はいらぬ」
そう言った魔と目の合ったヒロは焦った。
「せ、先約があるんです!今日は依頼を解決しなくちゃいけなくて……」
「依頼?魔女のか。魔法使いのお前が魔女の依頼とな」
コトリと首を傾げた魔は、一つ頷いた。
「では、それが終われば良いのだな。その依頼、ついてゆく」
宣言通り後ろをついてきている魔を振り返り、ヒロは小声でカオルに言った。
「あの、どうしましょう」
「力の強い魔だから無理には追い払えない。今日はこのまま依頼を完了させるよ」
「わ、わかりました」
「それに、ヒロはレディに聞けばいいなんて言ってたけれど、魔女が依頼を受けるのは人間からだけ。魔からの依頼は受けつけていない」
「えっと、つまり……」
「レディは、あの魔の願いを聞き入れることはできない」
ヒロの頭からサーっと血の気が引いた。
カオルは淡々と言葉を続ける。
「あの魔は魔法使いに用があるようだし、ここはヒロがきちんと対応するしかないね。幸い、魔は力づくではなく、言葉を持ってこちらと接してくれている。ある程度人間への理解のある魔だよ。いきなり頭から食べられたり、胴体真っ二つ、みたいなことはないと思う。よかったね」
いいのかそれは⁉とヒロは内心思いながら、はい、と力なく頷いた。
「ヒロ。魔女は、人間からの願いを聞き届ける」
カオルはゆっくりとそれを口にした。
「人間からの、願い……」
反復するようにヒロが言えば、カオルはそうだと頷いた。
「ヒロは人間だから、助けてってレディに願えば、助言くらいはくれると思うよ」




