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私たちは繭の中  作者: hayase
退魔師の後継『ナル』
36/45

名持ちの見つけ方-1-

―はい、帰った帰ったー。


大蜘蛛が去ってから、ナルはそうヒロを玄関まで追い立てた。


「え、もう終わりですか?」

「そ。目当ての魔は祓えたしね。君はさっさと帰って家で宿題でもしてな」


ヒロはムッとして言い返した。


「物足りませんっ!こんなとこまで呼び出しといて、もう終わりですか。ここに来るまで二時間もかかったんですよ!わざわざ、日曜日に、二時間かけて!こうして出て来たんですから、お約束の名持ちのことを教えてください。帰るのはそれからです!」

「えー、いまー?」


ゆるゆると返事をするナルをキッと睨みつけて、ヒロは言った。


「今ですっ!」


しかたないなぁ、とナルはちょいちょいとヒロを手招きして、再び屋敷の中へと誘った。


「それならこっち。屋敷の中なら、誰にも聞かれない」


ナルは部屋には入らず、庭の見える縁側に座った。

ひらひらと手で座るように促されて、ナルとひとり分くらいの距離を取ってヒロも座った。


「で、誰が名持ちになるのか知りたいんだっけ?」

「名持ちの見つけ方、教えてくれるって言いました。名持ちは選ばれるんじゃなくて、既に決まってるものだって」

「あー、それね」


ナルは庭を眺めながら、口を開いた。


「一番わかりやすいのは、退魔師。なぜなら、必ず西條本家の家に生まれるからね。西條家には代々伝わる、退魔師かどうかを判別するおありがたーい錫杖があって、その錫杖に産まれた西條の子を触れさせる。錫杖が鳴れば、その子が次の退魔師さ」

「それは、わかりやすいですね」

「だろ?魔女と悪魔憑きも似たようなものさ。血縁者から見つかることがほとんどだ」


ヒロはこてりと首を傾げた。


「西條家のような家系が、他にもあるってことですか?」

「魔女なんかはそうだな。魔女については東條家が担当していて、ほとんどの魔女は東條家かその分家筋から出ているよ。今代魔女のレディは、東條本家のれっきとしたお嬢様さ。魔女の見つけ方もわかりやすい。その魔女の力の目覚めが近づけば、どこからともなく黒猫が現れる。つまり、東條家の血縁で黒猫に選ばれた者が次の魔女ってわけ」

「では、カオルさんも東條家の血縁者だと?」

「まぁ、そうだと思うけどね」


煮え切らない返答をしたナルに、ヒロはムッとした。


「はっきり教えてください。曖昧な情報は困ります」


ナルはそんなヒロの様子をからかうように笑って言った。


「西條家と違って、東條家は自分の血筋を管理してないからさ。把握してない東條家の血を引く遠縁がごろごろいるわけ。カオルちゃんは、魔女の後継者としてレディのもとにいるわけだから、少なからず東條家の血を引いてるとは思うけど、だいぶ薄いものだろうね。数代遡ってもカオルちゃんのおうちは、東條家と関わりのない、見鬼の才も持たない普通のところだし」


聞き慣れない言葉だと、ヒロは思った。


「けんきのさいってなんですか?」

「魔を視る力のことだよ。術士の世界ではそう呼んでる」


―わたしは、視えないの。


そう言ったカオルの声が、ヒロの脳裏によぎった。

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