ハナドロボウ-1-
小学校の裏庭には、児童のものであろう植木鉢がずらりと並んでた。
―懐かしいな。
ヒロは自分が小学生のときに育てた花を思い出す。
どっちの花にする?って、種を選んで育てたっけ。
夏休み前に持って帰るのが大変だったんだよなぁ。
そうして見ているうちに、ヒロはあることに気づく。
「あれ、花がない……」
植木鉢に植えられたどの植物も青々と立派に葉を茂らせているのに、花が一つも見当たらないのだ。
「花泥棒がとっちゃうの。全部とっちゃうから、ここに花は一つもないよ」
ランドセルを背負った少女が教えてくれる。
「ハナドロボウ?」
カオルは花のない植木鉢を寂しげに見て答えた。
「花が咲かないと依頼が来たの。調べてみたら、どうやら魔が関わってると。その原因の魔をそう呼んでいる」
ヤマネ、とカオルは少女を呼んだ。
「花泥棒の姿は視たの?」
「視てない。でも小さいと思う。気配がとても弱いから」
カオルは頷くと、かがんでヤマネと視線を合わせた。
「今、どこにいるかわかる?」
「わかるよ」
ヤマネはまっすぐに腕を伸ばした。
「あの植木鉢の影にいる」
カオルは少女の指した植木鉢に近づくと、裏をそっとのぞき込み、見つけた魔に声をかけた。
「こんにちは」
それはとても小さな魔であった。
両の手で包みこめそうな大きさだ。
平たい頭に、角ばった頬。頭の横には二つのとがった耳のようなものが左右についていて、3本の出っ歯が特徴的だ。
胴は小さく背が曲がっていて、膨れた腹のへそのあたりにはバッテン模様。
腕は2本で手はハサミのように2つに分かれている。
「オマエ、なんだ」
魔は自分を視る人間を、不思議そうに見つめ返した。
「私は魔女の弟子。ここのお花をとったの、あなたなんでしょう?」
「そうだ」
「ここは人間の学校。花を獲れば、子どもが悲しむ」
「人間の学校?」
魔はカオルの言葉を繰り返した。
「この辺りを歩いていたら、声が聞こえた。『ホシイ、ホシイ』と聞こえたんだ。声は言っていた。『あの子のお花、キレイに咲いた。自分の花はまだなのに、あの子の花はキレイに咲いた。うらやましい』と言っていた。オレ、その声喰った。そしたら花がほしくなった。だから取って喰った」
「そう」




