謎の小学生
週末の金曜日。
素早く学校を飛び出したヒロは、家には帰らずそのまま電車へ飛び乗った。
指定された駅には10分ほどで着き、改札を出てスマホを確認。
待ち合わせにぎりぎり間に合う時間だった。
「急かしてしまったかしら」
声の方を振り向けば、パーカーとズボン姿のカオルが立っていた。
私服姿のカオルを見て、着替える余裕があったことにヒロは驚く。
「ごめんね。ヒロのところには道を繋げないってレディが……」
道ときいて、ヒロはひやりとする。
もしかしなくても、それはレディに会った日に通ったあの奇妙な空間のことだろうか。
「もしかして、あの不思議な道を使うのですか?」
「うん。時間がギリギリだから。こっち」
カオルが向かったのは、証明写真機の前。
「こわい?」
振り返ったカオルに問われて、ヒロは片頬を引きつらせながら答えた。
「あはは……。すこし」
「その感覚は正しいよ。これは人ならざる力だもの。でも、そんなに怖がり過ぎないで」
「はい」
小さな返事をするヒロに、カオルは少し考えてからヒロの服の右袖をつまんだ。
「持っててあげるから」
バサリと証明写真機の重い垂れ幕をまくって、カオルはヒロと共にその中へと踏み込んだ。
暗闇の中に、無数にきらめく小さな光。
目印もなにもない中、カオルは迷うことなく足を進める。
引かれる右袖の感覚に沿って、ヒロも足を動かす。
10も数えぬうちに右袖の感覚がなくなり、驚いて瞬きをすれば……。
「教室?」
学生であるヒロにとって、馴染みのある光景が広がっていた。
日付の書かれた黒板と、並べられた机たち。
下校時間が過ぎたであろう教室はガランとしていて、とても静かだ。
オレンジ色の夕陽が窓から差し込み、教室内に浮いたほこりを浮かび上がらせている。
机はヒロの学校のものより一回りほど小さい。
後ろの席にポツンと一つ置かれた赤いランドセルを見て、小学校だと気づく。
そのランドセルの方へ、カオルは声をかけた。
「迎えに来てくれたのね」
「一緒にいるの、だれ?」
ランドセルの影に隠れていたその子は、そっと顔をのぞかせて言った。
小柄な女の子だ。
「魔法使いの弟子よ」
「まほうつかい」
ランドセルを背負い、近づいてきたその子の頭をカオルはなでる。
「ありがとう」
「うん」
その子は右手でカオルの左手をつかむと、ぐいぐいと引っ張った。
「案内する。裏庭のところにいるの」




