サイジョウ
「西條っていうのは祓い屋のこと。代々魔を祓うことが生業。昔はそういう家も珍しくなかったけど、だんだんと数を減らしている。今代は特に、祓い屋家業は西條の一強みたいな感じだよ。西條の怖いところは、魔とみれば一切の迷いなく殲滅ってところ。ボクみたいな弱い魔は、見つかったら終わり。逃げる余裕や交渉の余地だってないよね」
「祓い屋と魔が交渉することがあるの?」
「そりゃあるさ。魔っていうのは人間の隣人みたいなものだから、見つける度に全部殺すなんて非効率的。そもそも人間に害を与える魔は一部だし。西條が今みたいに過激な動きになったのは20年くらい前からで、それより前はそこまでじゃなかったってかあさまから聞いたよ」
それからサンタはスッと目をほそめた。
「中途半端にこちらを視てると、命がいくつあっても足りないよ。視える目があるんだから、ちゃんと訓練しないと。確かにボクの姿は不安定だけど、隠形はできない。さっきからの様子を見るに、全然ボクらのこと視えてないよね。視えているのは、姿を見せようとするボクらの意識があること前提になってる。そんなのがカオルの傍にいるなんて、まったくもって笑えないね」
サンタは前を歩くカオルの方を見た。
「魔女っていうのは、ボクらの間じゃ有名だよ。だからカオルは目立つんだ。魔女の看板を背負っているからね。カオルの傍にいるなら、視えることは最低条件。そうじゃないと、カオルを守れないじゃん」
すぐ前を歩くカオルとレンジの足が止まって、ヒロとサンタもつられて止まった。
「こういう場所でしょ?」
ユキが立ち止まったのは、細い路地裏の前。
周囲を確認するように見渡したカオルは頷いた。
「ありがとう」
カオルはしゃがんで、カバンから500mlのペットボトルを取り出した。
その水を指に垂らして、路地裏前のコンクリートの地面に不可思議な陣を描いた。
円の中に幾何学的な模様を描いたものだ。
そしてその上に、赤い色で文字のようなものが書かれた白い札を置いた。
「開」
立ち上がったカオルは、子どもたち三人に手をつなぐよう言った。
「いつもの道だから、わかるね?」
頷いた子どもたちは名残惜し気にカオルを見上げ、それからその路地裏へと消えた。
カオルが置いた札も、消えてしまっている。
「前に通らせてもらった、不思議な道ですか?」
ヒロは魔女のもとへ行くときに通った真っ暗な道を思いだした。
「うん。あの子たちは常連さんだから、レディが専用の道を作ったの。あの子たちしか通れないけれど、必ずあの子たちが安全にたどり着ける道」
「常連って、依頼のですか?」
「迷子の常連さん。人が好きで、よく山から下りるの。街は楽しくて、つい時間を忘れてしまう。そのまま、山への帰り方も忘れてしまう。心配したあの子たちの母上様が、魔女のところに依頼をするってわけ」
「なにか、獣の魔ですか?」
「尻尾を見たから?」
「はい」
カオルはクスリと笑った。
「かわいいでしょ。あの子たちは狼だよ」




