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私たちは繭の中  作者: hayase
三狼
16/21

サイジョウ

西條(さいじょう)っていうのは祓い屋のこと。代々魔を祓うことが生業。昔はそういう家も珍しくなかったけど、だんだんと数を減らしている。今代は特に、祓い屋家業は西條の一強みたいな感じだよ。西條の怖いところは、魔とみれば一切の迷いなく殲滅ってところ。ボクみたいな弱い魔は、見つかったら終わり。逃げる余裕や交渉の余地だってないよね」


「祓い屋と魔が交渉することがあるの?」

「そりゃあるさ。魔っていうのは人間の隣人みたいなものだから、見つける度に全部殺すなんて非効率的。そもそも人間に害を与える魔は一部だし。西條が今みたいに過激な動きになったのは20年くらい前からで、それより前はそこまでじゃなかったってかあさまから聞いたよ」


それからサンタはスッと目をほそめた。


「中途半端にこちらを視てると、命がいくつあっても足りないよ。視える目があるんだから、ちゃんと訓練しないと。確かにボクの姿は不安定だけど、隠形はできない。さっきからの様子を見るに、全然ボクらのこと視えてないよね。視えているのは、姿を見せようとするボクらの意識があること前提になってる。そんなのがカオルの傍にいるなんて、まったくもって笑えないね」


サンタは前を歩くカオルの方を見た。


「魔女っていうのは、ボクらの間じゃ有名だよ。だからカオルは目立つんだ。魔女の看板を背負っているからね。カオルの傍にいるなら、視えることは最低条件。そうじゃないと、カオルを守れないじゃん」


すぐ前を歩くカオルとレンジの足が止まって、ヒロとサンタもつられて止まった。


「こういう場所でしょ?」


ユキが立ち止まったのは、細い路地裏の前。

周囲を確認するように見渡したカオルは頷いた。


「ありがとう」


カオルはしゃがんで、カバンから500mlのペットボトルを取り出した。

その水を指に垂らして、路地裏前のコンクリートの地面に不可思議な陣を描いた。

円の中に幾何学的な模様を描いたものだ。

そしてその上に、赤い色で文字のようなものが書かれた白い札を置いた。


(かい)


立ち上がったカオルは、子どもたち三人に手をつなぐよう言った。


「いつもの道だから、わかるね?」


頷いた子どもたちは名残惜し気にカオルを見上げ、それからその路地裏へと消えた。

カオルが置いた札も、消えてしまっている。


「前に通らせてもらった、不思議な道ですか?」


ヒロは魔女のもとへ行くときに通った真っ暗な道を思いだした。


「うん。あの子たちは常連さんだから、レディが専用の道を作ったの。あの子たちしか通れないけれど、必ずあの子たちが安全にたどり着ける道」

「常連って、依頼のですか?」

「迷子の常連さん。人が好きで、よく山から下りるの。街は楽しくて、つい時間を忘れてしまう。そのまま、山への帰り方も忘れてしまう。心配したあの子たちの母上様が、魔女のところに依頼をするってわけ」

「なにか、獣の魔ですか?」

「尻尾を見たから?」

「はい」


カオルはクスリと笑った。


「かわいいでしょ。あの子たちは狼だよ」

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