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私たちは繭の中  作者: hayase
三狼
15/22

ユキ

レンジが案内したのは、公園から10分ほど歩いたところにある市立小学校だった。


校門近くには自転車がいくつも止められており、何かのイベントごとがあることはすぐに察せられた。フェンス越しに見えるグラウンドには、揃いのユニフォーム姿で野球をしている子どもたちの姿とそれを見守る保護者らしき大人たちの姿が確認できた。


右手で服の胸元あたりを握ったまま、グラウンドの様子を伺ったカオルはレンジの名を呼んだ。


「ユキを呼んでこれる?」

「もちろん!」


途端、ヒロの目の前でするりとレンジの姿が溶けるように消えた。

言葉もなく目を見開くヒロに、サンタがそっと言い添える。


「気配を薄くしただけだよ。気づきにくくなっただけだから、意識すればあなたには視えるよ」


促されてカオルを見れば、その目線は何かを追うように動いていた。


「カオルは視えてるだろ」


ヒロは頷く。


「にぃは気配を隠すのも上手だけど、人化も得意なんだ」


得意気なサンタを見れば、お尻のあたりでふっさりとした尾が揺れている。


「サンタ」


カオルは静かにその名を呼んだ。


「いっけね」


瞬間、パッとその尾は消え去り、サンタは気まずげに尾のあったあたりを両手で隠した。


「見ーちゃった」


聞こえた少女の声の方を見れば、サンタやレンジとよく似た少女がレンジと一緒に立っている。

年も二人と同じくらいで、身にまとう服装も同じ若草色の和服だ。

二人と大きく違うのは、肩のあたりで切りそろえられたおかっぱの髪型。


「そんなんじゃ今度山から下りる時、サンタはお留守番だね」

「わわわっ!かあさまには言わないで。もっと練習するからさ」

「ユキに見つかったサンタが迂闊だよ。諦めな。サンタの好きなアイスはにぃちゃんが買ってきてやるよ」

「途中でアイス溶けちゃうよ」

「そしたらオレが食っといてやるよ」

「そんなぁ」


サンタは助けを求めるように、カオルの服の裾を軽く引いた。


「二日も帰らず母上様を心配させた三人は、しばらく山から下りるのは禁じられるんじゃないかな」


にっこり笑いながら、カオルは無慈悲にそう言った。


「「「えー」」」


三人はそろって抗議の声をあげる。


「かあさまが心配性なだけだよ。オレたちもう立派に人化もできるし、危なくなったらすぐ逃げるもん」


レンジが言った。


「ボク、時々人間の子どもと遊んだりするよ。キラキラのシールをくれたりするんだ。みんな優しいよ」


サンタが続くと、ユキが強くサンタを睨んだ。


「ばか。人化が中途半端なのに人の子に近づくなんて。大人よりもよほど過敏なんだから、用心しないと狩られちゃうよ」


そこでユキは、ちらりとカオルを見た。


「西條の匂いを街で見つけた。うかつに山へ帰れば、つけられるかもしれない。西條はいったい何を探している?」


さいじょう、と聞いたサンタとレンジはぶるりと身体を震わせる。

カオルは答えた。


「おそらく、噂になった怪異を調べに来ているのよ。川に出るというカタメウオ。川のヌシとは話をつけたから、じきに収まるはず。山へはわたしが責任をもってお返しする。あなたたちの母上様との約束だ」

「その人は西條の関係者じゃないのね」


ヒロを見て言うユキに、カオルは頷く。


「彼には魔女の依頼を手伝ってもらっているの。あまりここで話しては目立つから場所を移そう。ユキ。このあたりの人目を避けれる場所へ連れて行ってくれる?」


ユキを先頭に、先ほどと同じようにカオルと手を繋いだレンジ、そのすぐ後ろにヒロとサンタが並んで歩いた。

ヒロは気になって、姿が視えたり視えなかったりするサンタに尋ねた。


「サイジョウってなに?そんなに怖いやつ?」


サンタはあからさまに肩を跳ね上げ、それからすぅーっと姿が薄まる。


「待って待って、消えないで!」


ヒロが慌てて声をあげると、サンタの姿はそのままとどまった。


「何にも知らないんだな」


ヒロを見上げるサンタの目には、呆れが浮かんでいる。

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