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私たちは繭の中  作者: hayase
三狼
14/21

レンジ

サンタが歩いていくのは、一軒家が建ち並ぶ住宅街。

緩やかな坂道を上ったり下ったりを数度繰り返し、途中小さな川の上も通った。


そうしてたどり着いたのは、滑り台が一つとブランコがあるだけの小さな公園。

公園が小さすぎるせいか、子どもの姿は誰もない。


「にぃー。かあさまが待ってるって」


そう言うサンタが立ち止まったのは、滑り台下に広がる砂場の前。


「んー。なにー?」


先ほどと同じように、姿がないのに砂場からは声が聞こえる。

サンタと同じ、子どもの声だ。


「だから、かあさまが待ってるって」


顔を上げてサンタの方を向いたにぃは、カオルを見て嬉しそうに笑った。


「あ!カオルじゃん!!みてみてー。ちょうどこのトンネル大工事が終わって、開通したところなんだよ!」


砂場に築かれた砂山の塊に丸い穴が開いているのを確認したヒロは、そのすぐ近くにサンタとそっくりの子どもがしゃがんでいることにようやく気付いた。

サンタと同じ若葉色の和服に身を包んでいるがその頭には何も被っておらず、伸ばしっぱなしの髪はサンタよりも少し長い。


「あれ?知らない顔だ。魔女じゃないね。匂いが違う」


カオルの傍に立つヒロに気づいたにぃは、先ほどのサンタと同じようにしきりにヒロの匂いを嗅ぐ仕草をした。


「カオルの後輩だって。それよりにぃ。ねぇがどこにいるか知らないー?」


サンタはにぃの服の裾を引っ張ってそう聞いた。


「ユキなら人間の学校」

「今日土曜日だから学校ないでしょ」


休みの日なんだからと、サンタは続けた。


「ボールを追いかけまわす遊びを見てくるって言ってたぞ」

「野球かサッカーの練習試合でもあるのかな」


カオルはそう言って、にぃのもとへしゃがんだ。


「レンジ。その学校に案内してくれるかな」


にぃ、レンジはパッと笑って頷いた。


「まかせて!」


公園の水道で手を洗ったレンジは、カオルと手をつなぎたがった。

カオルはそれに笑って、そっと左手を差し出した。その手を握ったレンジは笑顔で学校への道を歩いていく。


ふたりの後ろを歩くヒロの横に、自然とサンタが並んでヒロへと話しかける。


「変わった匂いがするね」

「え?」


ヒロはとっさに、胸元の服をつまんで匂いを嗅いだ。それを見たサンタは笑って首を振る。


「汗臭いとかじゃないよ。それに、人間にはわからない。魔女の縁者?違うけど、似た感じがする。そんな匂いだ」


ヒロはなんと言えばいいのか困って、無言で小首をかしげた。


「そうだなぁ……。あ!かあさまみたいな感じだ。ずっとこの匂いを嗅いでいたいし、安心する」


人間の子どもにしか見えないその魔は納得したようにうなずいて、ニカっと歯を見せて笑った。

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