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エースストライカー  作者: 柿井優嬉


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42/45

代表⑩

 準々決勝の試合が終了した直後に見せた、わざわざ握手とユニフォーム交換を求めてやってきた、ラーセンの俺に対する行動の意図は、後に判明した。

 今大会、デンマークは、優勝を予想される割合が非常に高く、準決勝ではサッカー王国と呼ばれるブラジルを退けたものの、決勝戦でイングランドに敗れて、あと一歩のところで頂点には立てなかった。だが、トータルフットボールで旋風を巻き起こしたかつてのオランダと同じく、準優勝ながら最も人々の印象に残る素晴らしい戦いぶりだった。

 もはや言うまでもなく、その中心で、彼の存在なしではここまでの結果はあり得なかった、ラーセンは、得点王を獲得するとともにMVPにも輝いたのだけれども、インタビューで「準々決勝の日本戦が山場だと考えていた」とコメントしたのだ。

「とりわけ警戒していたのは、エースストライカーの野島だ。それは、アルゼンチンとポルトガル相手に立て続けにハットトリックを達成したのももちろんあるが、自分は、かつて所属していたコペンハーゲンで、試合時間残りわずかから二点差をドローに持ち込まれることになる、彼の素晴らしいプレーを目の当たりにしていたので、前の二試合の活躍前からチームメイトに注意を促していたんだ。『もしも日本が勝ち上がってきた場合、最も危険なのは奴だ』と」

 なんとも嬉しいことを言ってくれるじゃないか。どっちもスペインのリーグでプレーしているから、工藤のこともラーセンはよく知っているはずなのに。それに、葛城さんも称賛してくれたが、あの試合の俺の働きがあいつの記憶にそこまでのものとして残せていたとは、驚きだし感激だ。

 歳は五つも下なんだけれども、まあ、なんたって世界一の選手だからな。


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