代表⑧
日本の決勝トーナメント二回戦の対戦相手は、ポルトガルである。ここも、ワールドカップの優勝はないものの、それを上回るレベルの大会と言われる欧州選手権を制した経験がある、サッカーの強豪国だ。
ポルトガルも日本に似て素晴らしい中盤の選手をたくさん輩出してきた一方で、世界トップクラスのフォワードがいないのがウイークポイントだと長年指摘されてきたのだけれども、今回は、昨年のイングランドのプレミアリーグにおいて得点ランキングの二位になった、リベイロがいる。
俺の一学年下にあたる二十五歳で、ブラジルの選手のように足にくっついているのではないかと思ってしまうほど巧みにボールを扱えるのが特徴だ。目にするたび、一緒のポジションの者として、彼のあふれる才能にホレボレする。
俺と同じくイタリアでプレーしている屈指の左サイドバックのアマラウなど、他のメンバーにも一流のタレントが揃っているし、監督のエンリケスは率いた複数のビッグクラブで優勝を果たす結果を残しており、名将として高く評価されているといった具合で、チームは歴代最強との声もある。
それを証明するかのように、今大会、グループステージは三戦全勝し、ノックアウトラウンドの一回戦では同じくヨーロッパ予選を勝ち抜いたポーランドを三対〇の圧勝で退けてきたのだ。
だが、この難しいゲームでも俺の感覚は研ぎ澄まされていた。アルゼンチン戦の前日に、葛城さんが言ってくれた通りかもしれない。俺は、中学のとき工藤にレギュラーを奪われてなかなか立ち直れなかったように、自分はメンタルが弱いと思っていたけれども、試合中のプレーとなると、プレッシャーで自滅などせず、勝負強いみたいだ。だからこそ、チャンスでボールをふかしたりすることなく、学生時代からずっと並外れた数の得点を記録できてきたのだろう。
試合は、前半の十五分過ぎに、うちの守備陣による厳しいマークのなか、一瞬できた隙をついたリベイロに先制点を奪われたが、三十分の手前に俺が頭で決めて、一対一に追いついた。
続く後半にも、二十分ちょうどくらいの時間にリベイロのパスからポルトガルの中盤の選手に勝ち越し点を取られた、その数分後、再び日本に同点のゴールをもたらしたのは俺だった。
極め付きは、後半三十五分過ぎ、ディフェンダーの裏を取って、俺はゴールの左下の隅にシュートを叩き込み、ワールドカップの、それの決勝トーナメントでの、二試合連続のハットトリックという偉業を成し遂げたのである。
「やった! やった! すごいよ、野島くん!」
もちろん他のメンバーたちの祝福もすごかったが、工藤がベンチから一番早くやってきて、飛び跳ねるように大喜びしてくれた。
「ああ! ありがとう!」
俺は工藤と抱き合った。夢のような最高の瞬間で、嬉しい感情が俺の全身をものすごいスピードで駆け巡った。
こうして三―二で試合終了の笛が鳴り響き、またしても優勝候補の一角を打ち負かして、葛城ジャパンはもう一段トーナメントの山を登ったのだった。




