代表④
こうして幕を開けたワールドカップのグループステージで、俺個人はというと、フランス戦でのスタメン落ちが決まった後も、変わらずトレーニングを一生懸命行った。工藤がケガをするとも限らないし、途中出場は十分あり得るのだから。
だが、結論から先に言ってしまうと、出番は回ってこなかった。
グループステージ第二戦の相手国はパラグアイだ。日本が前半と後半のいずれも一ゴールをあげ、一方でパラグアイの攻撃を完封に抑えて、二―〇で勝利した。
セネガルが、その次の、一次リーグ最後の対戦チームで、二対一とスコアは僅差ながら、前半の早い時間に二点を奪い、失った一点は後半のアディショナルタイムであったのと、内容としても終始危なげなく試合を運べ、勝ったのだった。
ただ、そんなには離れていない点差の通り、想像した以上に苦戦したことは確かだ。二カ国とも、いくら現在は強いとは言えないにしても、イメージ的にフランスよりも日本のほうが勝ち点を獲得するチャンスはあると考えた可能性はかなりあるし、徹底的に対策を練ってきたに違いない。こちらは、守備を固められて、攻めあぐねた時間も少なくなかった。また、ワールドカップともなるとどこの国でも、膨大な数の国民の期待を背負うのである。選手たちはまさに死に物狂いで、他の大会とは気合いの入り方が違う。
それでも我ら葛城ジャパンは、今の説明のように、想定されていても現実にするのはひどく困難を伴う連勝を見事成し遂げて、決勝トーナメント進出をものにしたのだった。その点に関しては俺もほっと胸をなで下ろした。
工藤は、値千金の同点ゴールを奪ったフランス戦に続いて、この両方のゲームでもシュートを一ずつ決める立派な働きをした。日本の総得点五のうちの三ゴールをあげたのだから、フォワードの役割をきっちり果たしたと誰もが認めることだろう。
また、全部の試合で終盤に途中交代もしたのだけれども、第一戦と第三戦は守りを強化するための選手とだった一方、二戦目のパラグアイのときは同じフォワードとの入れ替えだったにもかかわらず、代わって投入されたプレイヤーは俺ではなく、墨谷という年下の奴だったのだ。
つまり、どうやら俺は完全に試合で使う戦力から外れてしまったようだ。
ただ、それは悔しい反面理解もできる。多少はポストプレーもやれるものの、俺と工藤は基本的に同じタイプの選手だから、ピッチに立つのはどちらか一人でいい。そして何度も述べるが、本当に工藤という人間は、野生の動物を思わせる、ボールを目指してアグレッシブな動きをし続け、途方もないことをやってくれる期待をしてしまうから、俺が監督でも工藤のほうを選ぶかもしれない。
とても厳しい状況となった俺だが、腐るとか、もうこの大会は裏方に徹すると踏ん切りをつけたりする気持ちは微塵もない。しつこいようだけれども、昔の俺じゃないし、工藤がケガをする事態もあり得るのだから。




