代表①
ワールドカップのアジア予選が進んでいくなかで、ワントップである日本代表のフォワードは、基本的に三人の選手が軸となった。
まずは千葉大輝さんだ。千葉さんは、俺より五つ学年が上で、ほとんどの年代別の代表にも名を連ねるなど、長いこと日の丸の重圧を背負ってきた偉大な人だ。人間的にも、チームメイトによく声をかけるリーダータイプで素晴らしく、実に頼もしい。ドイツのベルリンというクラブに所属してレギュラーを張り、前の日本代表監督のマイヤーさんのもとではほぼ毎試合スタメンで使われていた。
葛城ジャパンでも、最初は千葉さんが一番手として起用されていた。しかし、ベルリンで、伸び盛りである地元ドイツの若手のプレイヤーにポジションを奪われて出場機会が減り、試合勘が鈍ってしまったのもあるかもしれないが、代表においても無得点が続くなど精彩を欠くようになった。
代わりに出番が多くなったのが、俺だ。イタリアであの名門チーム相手の二試合連続ゴール以降も順調に満足な働きをすると、代表メンバーから漏れることは皆無と言っていい立場になり、スタメンで出たUAE戦でハットトリックを記録して、レギュラーも手に入れる格好となった。ワールドカップにエースストライカーとして出場して優勝するという目標達成への、ここまでは理想的な流れだった。
ところが、クラブではコンスタントに点を取るなど調子の良さをなおも持続する反面、代表の試合になると、気合いの空回りか、他の選手とのコンビネーションが限られる代表の時間による練習不足でいまいちなのか、原因は一つに断定できないけれども、ともかく、出来が良かったり悪かったりと不安定で、定位置を確保とまではならなかった。
そこで浮上してきたのは工藤だった。
工藤は、俺の考えていた通りJ1で活躍して、スペインに渡ると、入団したサラゴサというクラブで、得点もさることながら相変わらずの献身的で激しいプレーが現地でも高く評価され、日本にいるときから選ばれるようになっていた代表に定着し、俺を脅かす存在となったのだ。
「やったな」
「ありがとう」
以前再会した際に口にした、一緒に代表入りという願いが実現して嬉しいが、先発メンバーを競うライバルであり、今度こそあいつに勝ちたいという思いももちろんある。工藤のほうも遠慮をするつもりはないはずで、あいつの初のメンバー入りのときこそ笑顔でこのように言葉を交わして握手したけれども、気を抜けない最終予選が続くなか、もう喜び合ったりはしていない。
中学の時期と同じく、俺がスタメン、後半の途中からあいつが俺と代わって出場というかたちが多くなったのだが、やはり工藤は短時間でも結果を残せる勝負強い男だ。日本はグループで首位に立っていたものの、ホームなので負けはなんとか避けたいサウジアラビアとの一戦で、俺がゴールはおろかプレー全体がいまひとつだったのに対し、交代して出たあいつは試合終了間際にこぼれ球を押し込んでゴールネットを揺らして、痛い黒星となるのを免れる、値千金の同点弾を奪ったのである。このドローによって、ワールドカップに出られるグループリーグの二位以内が確定的となった。
そして、日本のワールドカップ本大会の出場が決まると、消化試合となるカタール戦では工藤が先発で使われたりと、俺とあいつはポジション争いで完全に横一線という状態になったのだ。
その後の強化試合では、ナイジェリア戦で、俺が前半で一得点し、後半の頭から出た工藤がこちらも一ゴール。対ウルグアイでは、反対に工藤が前半で俺が後半開始からという起用のされ方で、両者無得点に終わるなど、レギュラーはどちらか決め手を欠いたままワールドカップを迎えることになったのだった。




