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エースストライカー  作者: 柿井優嬉


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海外⑨

 ギリシャ、ベルギー、そしてドイツのブンデスリーガと、なんとヨーロッパの三カ国の一部リーグで得点王になっているのだ。ドイツの強豪チームのミュンヘン時代に出場したチャンピオンズリーグにおいて、スペインのバレンシア相手に放ったシュートは伝説的というほどの素晴らしいスーパーゴールで、サッカーファンでなくともこのシーンについては日本人であれば相当の人が知っているし、ここぞという場面では必ずと言っていいくらいにゴールを決めた、国内歴代ナンバーワンと称されることも少なくない、フォワードの名プレイヤーである。

 人柄はというと、口数は少なく、謙虚で、スーパースターでありながらまったく偉そうなところがないのが日本人らしいと語られることが多い。

 また、別に恨んでいるわけではないが、小学生のときに受けたセレクションで、力のない俺にどう言葉をかけたらいいか困ってしまったといった苦笑いのような表情をあの人にされたことは、今もショックな出来事としてしっかり記憶に刻まれている。

 そして、俺は決めたのだった。招集されるのが当たり前になりつつある今でもなお、「自分なんかがいていい場所なのか?」と代表に臆する気持ちが抜けきっていなかったけれども、葛城さんに認められて、エースストライカーとして、ワールドカップに出場し、ずっと日本代表が目指して掲げているその大会での優勝を実現させる——。

 これを次の、いや、俺のサッカー人生で最大の、目標にすると。


 ナポリでも最初は当然のごとく苦労したけれども、これまでほどではなかった。それは、今までの積み重ねによってサッカー自体の実力がついてきたのに加え、新しい環境に対しての適応力も身についたからという気がする。

 ただ、やはりイタリアのセリエAはJ3やブルガリアと比べて段違いにレベルの高いリーグだし、予想した通りにここではどこのチームも守備が強固だ。フォワードのレギュラーをつかみこそしたものの、以前のように得点を重ねるというところまでにはなかなかたどりつけなかった。

 しかし、ようやく、連戦だったローマとミラノという優勝候補のビッグクラブから立て続けにゴールすることができた。とりわけミラノ戦は、イタリア代表のゴールキーパーを向こうに回し、その俺のシュート一点による一対〇での勝利という貴重な得点だったので、嬉しさも格別だった。

 そのすぐ後、試合を控えた日本代表に選ばれた。もう常連と言っていいくらいになっているが、葛城さんが監督になってからは初のメンバー入りである。あの人に呼んでもらえたのだから、これまでよりも喜びは大きかった。

「野島」

 代表での練習前に、葛城さんから声をかけられた。

「はい」

「イタリアで頑張ってるな。期待しているぞ」

「……は、はい。ありがとうございます。代表の試合でもしっかり結果を出せるように頑張ります」

 会話はそれだけで終わったが、緊張したし、すごく嬉しかった。葛城さんはマイヤーさんが監督だったときのコーチでもあったので、もう付き合いは長いけれども、一対一で言葉を交わしたことはなかったのだ。

 代表はこれから、ワールドカップ本大会の出場権を獲得するための、アジアによる最終予選が始まり、強豪国ばかりとの対戦になってくる。

 それに向けて、俺は改めて「やってやる」という気持ちが込み上げたのだった。


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