海外⑦
「は、はい!」
俺は準備を始めた。
足はやはり大丈夫、まったく問題はない。
まもなくグラウンドに投入されると、すぐにラーセンとうちのディフェンダーがもつれて倒れた。ラーセンがひざの辺りを気にしている。
本人は平気だというジェスチャーをしたけれども、もう残り時間はそれほどなく、この試合はものにできるし、大黒柱のケガのリスクをわずかもないようにしたいということでだろう、交代となった。
とにかく手強いラーセンが抜けたとはいえ、これで向こうは完全に逃げきるモードになって、十一人全員が守備に徹するのは必至だから、良い状況とは言えない。
でも、俺はやってやるという気持ちがみなぎっていた。中学で工藤がしてみせて、俺は高校の最後の選手権で狙いながらも達成できなかった、試合残りちょっとの状態からの三ゴールを、今度こそやってのければ、四―三で勝利だ。
時間を確認すると、後半三十五分過ぎで、あと八、九分。アディショナルタイムを含めれば十分はあるから、いける。絶対に逆転してやる!
そう意気込んで、ペナルティエリア付近でボールを受けようと動き回ったが、コペンハーゲンの選手たちは得点源の俺を当然警戒してマークがきつく、なかなか自由になれなかった。
そのぶん味方の攻撃のプレイヤーはフリーだけれども、ゴール前の人数が多くて、やはり攻め手を欠いた。時間が経過する。
なんとか相手の守りをこじ開けようと、うちの守備的なミッドフィルダーのペトロフさんが遠目からシュートを放った。低い弾道で、枠を捉えた、素晴らしいキックだった、が、キーパーがナイスセーブで前に弾かれた。
しかし、向こうのディフェンダーを振りきった俺が詰めて、そのボールをゴールの右隅に押し込んだ、かと思いきや、カバーに入ったサイドバックの選手にラインギリギリでクリアされてしまった。
まだだ——。
俺は諦めず、さらにボールに食らいつくと、狙ったわけではなく結果的に芸術的なオーバーヘッドキックとなって、今度こそゴールネットに突き刺すことに成功した。
「よし!」
すぐに球を拾って、試合が再開すると、また前線に上がった。一点差となり、守りきるんだという気持ちがさらに強くなった、コペンハーゲンのディフェンスの選手が複数人近づいてくる。
俺は相手のゴールを背にしてボールをもらおうとした。ポストプレーもだいぶ身についたので、勝負できる!
けれども、送られてきたボールを見ながら、とっさのひらめきで、受け取らずにスルーした。そして、素早くターンして、思惑通りにゴール方向へ転がっているボールに向かっていった。
前からキーパーが防ごうと接近してきて、後ろからは今かわしたディフェンダーたちがやってくる。
その両者よりも先に追いついた俺は、つま先でボールに触れ、ゴールを右隅に決めたのだった。
「うおー!」
寝た状態で両腕を上げて喜ぶと、メンバーが次々俺のもとにやってきて、覆いかぶさり、祝福してくれた。
「暁斗、よくやった!」
「ナイスシュート!」
「すごいぞ! ラーセンにも負けてねえ!」
でも、まだ一点足りない——。
そう思って我に返り、ボールを拾いにいった。
が、直後に試合終了の笛が鳴った。
「ちくしょう」
ドローに持ち込んだとはいえ、これで喜んでいては、また工藤に負ける。
しかも、この試合はうちがホームだったので、現実的にも、満足な結果では決してないのだ。
そして、案の定と言えようか、敵地でのゲームでは、ラーセンになんと四ゴールを決められ、俺はフル出場するもほとんど何もできず、四対〇の大敗というむなしいかたちで、チャンピオンリーグから姿を消したのだった。




