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エースストライカー  作者: 柿井優嬉


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海外⑥

 俺はソフィアでの三年目を迎えた。

 実は、前のシーズンの好結果によって、ヨーロッパのもっと上の実力のクラブから、それも複数、オファーがあったのだが、今回は敢えて残留を選んだ。それは、優勝したことで、チームがヨーロッパチャンピオンズリーグの出場権を獲得したからだ。ブルガリアは強豪国ではないために優勝ながら予選の一回戦からの登場になるのだけれども、とはいえ、この世界最高峰の戦いは必ず俺のさらなる成長につながるはずだ。

 ただ、国内の試合で活躍を継続しないと、夢でもあるその大舞台のピッチに立つことはままならない。気を引き締めて、油断することなく、俺の最も得意とするディフェンダーの裏を取る動きを中心に、変わらず得点を積み重ねることができている。

 そして、チャンピオンズリーグの一回戦でも念願の出場だけで終わらずにゴールを決めて、ソフィアは二回戦に進出した。

 ところが、ブルガリアのリーグの試合で、終了間際に足を軽くひねったために、「次のチャンピオンズリーグのコペンハーゲン戦は大事を取ってスタメンから外す」と監督に言い渡されてしまった。

「大丈夫です。出られます」

「ノー」

 感情で言ったのではなく、本当に問題ないと判断して申しでたのだけれども、首を縦に振ってもらえなかったのだった。


「うわっ」

 コペンハーゲン戦が開始する少し前に、ニュースが飛び込んできて、俺は驚きと興奮で声を発した。

 工藤が、Jリーグの試合で、後半の途中から出場し、決勝点となるゴールを決めたのである。

 あいつの懸命なプレーは本当に見る者の目を釘づけにする。だからこそ、Jリーグが秋春制に移行したので前年は半端だったために、実質ルーキーのシーズン序盤という今の時期に、早くもベンチ入りメンバーに名を連ね、控えからとはいえ試合に使ってもらえたのだろう。そして、見事に首脳陣の期待に応えたわけだ。こんなもんで終わりじゃなく、まだまだ結果を残すに違いない。

 うー、海の向こうで、俺も負けずに活躍しているんだって情報を、工藤の耳に送り届けたい。

 そんな気持ちを抱えて、こっちもキックオフを迎えたなか、目の前でも大いなる刺激を与えられた。それは、相手クラブのコペンハーゲンの、身長百八十九センチの大型センターフォワードである、エースストライカーという肩書にふさわしい、ヨハン・ラーセンのプレーだ。

「すげえ」

 以前述べたように、俺は、自分のチームの選手とともに、対戦するプレイヤーの情報は隈なくチェックし、インプットしている。なので、ものすごい才能の持ち主であることは、試合が始まる前から十分にわかっていたというのに、ベンチから試合を見ていて、思わず声を漏らしてしまった。

 ラーセンは、まだ十九歳にもかかわらず、すでにデンマーク代表でもエースの立場になっている、将来は間違いなく世界最優秀選手の候補に入ってくるプレイヤーだ。それどころか、数えきれないほどの回数の受賞にまで至る可能性も大げさではなくある。

 まるで戦車のごとく敵チームのディフェンダーをなぎ倒すほどのパワーを持ちながら、繊細な足もとの技術も備えており、頭でも左右どちらの足でもゴールを決めることができる、まさにサッカー、そしてフォワードをやるために生まれてきたような男なのだ。

 顔立ちは端正で、容姿は野獣といった感じではないが、眼光が鋭く、近寄りがたい雰囲気で、孤高という言葉がよく似合っている。

 コペンハーゲンは、デンマーク国内では最強の存在と言っていい名門でクラブであるけれども、近年はチーム状態が良くなかった。それが、彼が加入して大量にゴールを奪ったことで、前の年はリーグ戦で九位だったところから一気に優勝まで上り詰めて、チャンピオンズリーグの出場資格も勝ち取ったのである。

 今日の試合も、数年前からの改革によってかなりのタレント揃いになり、チームの総合力では確実に上回る我らソフィアが、幸先よく一点を取ったものの、何人もからマークをされながら、ラーセンがほぼ一人で前半のうちに二ゴールをあげて逆転し、後半のたった今も豪快なミドルシュートを叩き込んで、ハットトリックを達成しやがった。俺がつい発してしまった言葉は、それを目にしてのものだ。

 くそー。俺も同じピッチに立って、この男に負けないくらい暴れまくりたい!

 俺が監督に試合に出られますと訴えたのは、チャンピオンズリーグで戦いたいというのももちろんあるが、ラーセンと勝負したい気持ちもあったのだ。

 すると、そんな心の声が聞こえたかのように、監督から言葉をかけられた。

「野島、いくぞ!」


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