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エースストライカー  作者: 柿井優嬉


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23/36

J④

 クラブがJ2に昇格したこととともにビッグな、いや、それ以上かもしれない、出来事として、俺は二十六ゴールを記録して、得点王になったのである。

 ランキングの二位はルシオで二十ゴール。同じチームで一位と二位を独占したのだから、自分で言うのもなんだけれど、以前は秩父に足りずに困っていた攻撃力はJ3で群を抜くレベルまでアップした。何より、まさか己が、しかも入団してわずか二年で、世界的な注目度合いは低い日本の、三部とはいっても、プロのリーグで得点王になれるとは、俺自身びっくりだ。

 そして、ルシオが優勝を狙える強豪の静岡ヴォルツ、俺には中堅のリボーン福島と、お互いにJ1のクラブから誘いの声がかかったのだ。

 Jリーグの、それも上のカテゴリーのチームからということに関しては、ランキングでナンバーワンのゴールを決めたのだから、あり得るだろうなと思っていたが、サプライズが待っていた。俺にもう一クラブからオファーがあったのだけれども、それは海外からだったのである。

 ブルガリアの首都がホームの、ソフィアというチームで、ブリガリアは強豪国ではないものの、サッカーが盛んなヨーロッパの一部リーグに属しているし、近年低迷しているとはいえ、首都にあるクラブなだけあって、国内では優勝を何度もしている名門だ。俺クラスの選手からすると、異例と言って差しつかえない誘いである。

 なぜ? という気持ちも当然あったが、おそらく代理人の手腕だとすぐに思い浮かんだ。というのは、プロ入りを報告した後に、鷲尾さんから切りだされて、こういったやりとりがあったのだ。

「俺、代理人についてよくわからないけれど、できるだけ良い人をつけたほうがいいんじゃないか?」

「ですよね。俺も同じことを考えてたんですよ」

「そうか。じゃあ、調べて、腕のいい人を見つけてやるよ」

「えー? 散々お世話になったのに、もう俺にためにいろいろやってくださらなくていいですよ」

「いいんだよ。野島のためでもあるけど、俺が楽しいんだから。だからこそ、サッカー部のマネージャーをやってたんだ」

 こうして、鷲尾さんが探してくれて、代理人になってもらった園川さんは、人柄も素晴らしいし、かなりの凄腕らしい。それゆえ、上手いこと俺のことを売り込んでくれたのだろう。園川さんにも、園川さんを見つけだしてくれた鷲尾さんにも、とりわけ鷲尾さんは秩父に入るときも助けてくれたのだから、感謝という言葉に尽きる。

 さて、じゃあ、どうするか。福島に行くか、ソフィアに行くか、はたまた、J2に上がるんだし、秩父に残留するというのもなくはない。

 秩父は素晴らしいチームだ。ポストプレーをやって叱責されたなんてときもあったけれども、自分が勝手なことをやったのであって、俺を試合で使ってくれた奥田さんは恩人と言えるくらいの人だし、チームメイト、スタッフ、そしてサポーター、みんな良くしてくれて、大好きだ。

 しかし、ここにずっと留まるというのは選手としてあまりに冒険心がない。ほとんどプレイヤーが、年齢などを加味した今の俺の立場なら、移籍を選ぶはずで、成長するためにも、他のクラブに移るべきだろう。

 だとするならば、まずは国内の最高の舞台であるJ1で経験を積んでからという判断の仕方もあるが、やはり、最も厳しい環境であり、次にいつ訪れるかわからないチャンスでもある、ソフィアでのプレーがベストだ。

 この決断に迷いはなかったので、俺は誰に相談することもなく、事後報告で、ブルガリア行きを選んだのだった。

「まさか、お前より先にヨーロッパでプレーすることになるとはな」

 秩父での最後のとき、ロッカールームで、俺はルシオに言った。

「負けるなよ。俺がそっちに行くまで」

 ルシオは熱い眼差しで俺にエールを送ってくれた。

「ああ。叶うなら、あっちで対戦したいな」

「そしたら、けちょんけちょんにしてやるぜ」

「フフフッ。でも、本当に実現したら、ヨーロッパのクラブからずっと必要とされてるってことだから、俺だってすごいプレイヤーになってるわけだぞ。お前が最後にやったハットトリックを、今度は俺が見せてやるさ」

「ほお。そいつは楽しみだ」

 ちょっとの間、俺たちは笑顔で見つめ合った。

「じゃあな」

 俺はそう声をかけた。

「おう」

 ルシオは大きくうなずいた。

 そして、握手をし、軽くハグをして、別れた。


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