J②
俺は、主に体幹を鍛えるとともに、当たり負けせずボールを保持して味方に出せるようにする練習をくり返した。
そして、実戦でも、パスを送るルシオにはあらかじめ伝えて、ポストプレーを何度も試みた。
「くそっ」
しかし、やはりなかなかうまくいかなかった。まったく指示していない俺の動きに、奥田監督は雷を落とした。
「なに勝手なことをしてるんだ! もうお前を使わんぞ!」
ルシオは怒っても出場メンバーから外すという選択肢はないが、俺には本当にそうする考えがあっただろう。
それでもやるしかないと思っていた俺に、あるときルシオが近づいてきて、こう話しかけた。
「もう下手なポストプレーはやめろ。見てられねえ」
「え? だってさ……」
「お前なんかに助けてもらわなくったって、俺は点を取れる。それに、お前の決定力は認めるから、もったいない。シュートを決めることに集中しろ」
「……わかった」
要するに、俺の気持ちを受けとめて、監督の指示通りチームのために汗を流すことを約束してくれたのだ。
それからは、足かせが外れたように、俺たちは躍動した。まずは、今季の初めからずっと良い状態をキープし、リーグで二位につけていた、キューブ鳥取という強敵のチームを相手に、すべてルシオのパスから俺は四得点し、とどめにルシオが自らゴール前に持ち込んでそのままシュートを決めて、五対〇で圧勝した。
「お前たち、よくやった!」
試合終了直後に、奥田監督は、特に中盤を完全に支配して独壇場というくらいの活躍だったルシオを褒め称え、俺たち二人を抱擁した。ルシオに関しては、おそらく監督が頭に思い描いていたプレーそのものであり、かつ、これまで散々手を焼かされたのも大きいに違いない。普段はコワモテと言っていい、常に誰かをにらんでいるような顔つきで、とても近寄りがたいのに、その喜びようといったら、まるで自身の幼い息子が小学校の運動会のかけっこで一等になったとでもいう具合で、俺たちは嬉しさ以上に可笑しくて笑ってしまったのだった。
この試合を皮切りに、俺は点を取りまくり、マークがきつくなると、ルシオが俺へのパスではなくドリブルで攻め上がって、大概は自分でシュートをし、良い位置にいて完全にフリーなど、場合によっては他の味方に出すことで、ゴールを奪うというパターンが確立し、俺は得点ランキングの首位に踊りでて、ルシオも三位まで上昇した。
「ルシオ、ナイス!」
活躍したあいつに俺が声をかけたときのことだ。
「これくらい、たやすい。そんなに喜ぶな」
こんなそっけない返事をしながら、表情からはルシオも嬉しくて満足しているのがよくわかった。
チームは、リーグ戦の後半は、ほとんどが勝利、悪くても引き分けというほどの快進撃で、怒涛のごとく勝ち点を積み上げた。気持ち的にも乗っていて、この頃は負ける気がまったくしなかったのだ。
だが、前半戦の低迷が響き、四位にとどまって、残念ながら優勝と二位のクラブだけが許されるJ2への自動昇格はならなかった。
それでも、三位から六位で行われるトーナメントによるプレーオフで勝ち抜けば、J2入りできる。ただ、四チームのうち上がれるのは一チームのみなのだから狭き門で、非常に厳しい戦いだ。
その初戦は、リーグ五位のバイタル高松というクラブが相手だった。シーズン後半の勢いそのままに、俺は二点を取り、ルシオが一ゴールをあげて、三対一のスコアで快勝することができた。
次の試合の結果で、昇格するチームが決定する。
もちろんあらゆる点で異なるけれども、高校の最後の選手権のときは負けてしまった決勝戦だ。今度こそ勝って、監督、チームメイト、そしてサポーターのみんなと、喜びを分かち合うぞ! と、俺は気合いが入ったのだった。




