高校⑨
その後、外原は、これまでもサボったりなどはしていなかったが、すごく熱心に練習に取り組むようになった。
「どうしたんだ? あいつ」
「何かあったのか?」
「さあ?」
同じ三年の部員たちとこういった会話になったりするほど目を見張る活動ぶりだったのだ。
それで、外原が一人でいるときに、俺は近寄って声をかけた。
「お前、最近すごく練習熱心じゃんか。どうかしたのか?」
外原は、少し躊躇してから、口を開いた。
「だって……俺、こんな性格だから、誰かに『お前がプロになれたら嬉しい』なんて言われたことなかったんで」
「……ああ」
一瞬、何のことかと思ってしまったけれども、すぐに少し前の俺たちのやりとりが頭に蘇った。
あんなちょっとの言葉でそこまで張りきるなんて、こいつ、生意気で偉そうな振る舞いや言葉遣いによる自業自得というのがあるにしても、よっぽど孤独なつらい思いをしてきたんだな。それに、本人に言ったら怒りそうだが、可愛いとこあるじゃねえか。
「そっか。頼りにしてるからな。頑張ろうぜ」
俺は外原の肩を叩いて、そう述べた。
そうして、ただでさえ力があるのに、やる気全開となった外原や、他にも幾人もいる素質のある下級生に、もちろん俺たち三年生も奮闘して、最後の大きな大会である高校サッカー選手権で、東明大付属は予選のトーナメントを勝ち上がっていき、決勝までコマを進めたのである。
「よっしゃー!」
「やった、やった!」
個々の実力だけではない。そもそもそこまでひどくなかったのと、みんな扱いに慣れたことで、外原もすっかり溶け込み、集団や組織として見ても、自慢できるだけの良いチームとなっている。
あと一勝で、悲願の全国大会行きだ。
しかし、ラストの関門となる対戦相手は、関ケ浦高校という、過去には全国優勝を成し遂げたこともある強敵なのだ。サッカーをやっている奴はその高校名を聞いただけでビビってしまうくらいの強さで、現在のチームも俺たちの地区で群を抜いている立場だ。ここらへんの事情を知る誰もが、勝つのは関ケ浦と予想していることだろう。
「いいか。負けて元々、俺たちに失うものはないんだ。気楽に、思いきりプレーしようぜ。いくぞ!」
俺はメンバーたちに声をかけた。
「はい!」
「おう!」
そして試合を迎えたのだった。




