高校⑧
三年生になり、俺は部長、そしてキャプテンになった。
頼りにしていた篠宮さんも鷲尾さんももういないので、なおのこと自分がしっかりチームをまとめて強くしなければならず、大変だ。
だが、チームが強豪の仲間入りをしたことで、うちでプレーをしたいと、才能のある新入部員が何人も加わってくれたのである。ありがたかった。
その筆頭と言えるのが、外原という男だ。足もとの技術は俺以上で、能力の高さは本当に素晴らしい。
ただ、反面、こいつは、優等生がほとんどの学校がゆえに、今までサッカー部においてもほぼ皆無だった、非常に生意気な性格をしている。
「野島さん、プロを目指してるんですってね。まあ、普通に考えれば無理ですけど、俺がならせてあげますよ」
外原のポジションはトップ下だ。アシストで得点を演出するなど、自分が活躍できるように後押ししてやると言っているわけだ。
「お前さー、ふざけるなよ」
二、三年生のメンバーたちが、敬語は使いつつも、先輩に対して上から目線の外原の態度に、再三注意を与えるが、まったく変わらない。
俺自身は、別に生意気でもちっとも構わない。サッカーの上手い奴はだいたいそういうものだし、頼もしさすら感じる。けれど、ピッチ上はいいが、そうじゃない場では礼儀を知らないと本人が損をすることになるので、その点だけは気をつけろと口にしている。そんな程度で、厳しくないために、笑顔でよくしゃべってくるなど、外原は俺のことを好意的に思っているようだ。
ある日、俺が体幹トレーニングをしていると、このときもフランクな態度で、外原が話しかけてきた。
「どうしたんすか? 先輩。ここんとこ、やたらと地味なトレーニングをしてるじゃないですか」
「今は全然やれない、ポストプレーを身につけようかと思ってさ。だからフィジカル強化のためにだよ」
「へえ。万能型のフォワードを目指そうってことですか。俺だったら、それよりも、長所を伸ばす努力をしますけどね」
「いや、だって、俺がポストプレーをできれば、お前がより活きて、チームの攻撃力がアップするだろ?」
「ええ?」
外原は驚いた。
「でも、うまくいったら、先輩自身のゴールが減っちゃうじゃないですか。プロの選手になるのに、目立つために、うちの得点は全部自分が決めるくらいにしといたほうがいいでしょう?」
「まあ、今まではそういう意識もあったけれど、プロになれるかわからないからな。別に諦めちゃいないが、俺は部長だし、キャプテンでもあるし、チームのことも考えなきゃいけないからさ」
外原は軽く首をひねった。
「甘いなあ。そんなことじゃ、ただでさえ実現への道は険しいってのに、プロなんて絶対に無理ですよ。たとえチームメイトでも、自分以外のことなんか知らねえぜってくらいでなきゃ」
俺は微笑んで言葉を返した。
「かもな。だけど、俺はたくさんの人に助けられて今があるし、そこまでやるのは性に合わないのもあるからな。代わりにお前がいっぱいゴールを奪ってプロになってくれたら、それでも嬉しいぞ」
すると、なぜか外原はうつむいて黙った。
「ん? どうかしたか?」
「いえ……」
そう口にすると、俺のもとから離れていった。
俺は、「あいつの機嫌を損ねることを言ったっけな?」と、今度は自分が小首を傾げたのだった。




