高校④
自宅の自分の部屋で、俺はベッドに横になっている。
「あーあ」
どうしようかな。あの小学生でのセレクション以後、高校くらいまではサッカーをしようって意識だったし、あんなに俺のことを思って誘ってくれている鷲尾さんのために、あと三年だけ、やるか。
でもなー。
うーん……。
「暁斗ー、お友達よー」
なっ。
「はーい」
俺は、呼んだ母さんに返事をして、体を起こした。
何だよ、水本。しつこいぞ。
そして、玄関まで行って、ドアを開けた。
え。
「よお」
そこにいたのは、水本ではなく、羽村だった。中学で俺が大会の先発メンバーから外されたとき、先生に「納得できない」と声を張り上げんばかりに訴えてくれた、部員のなかでかなり仲が良かった男だ。
しかも、羽村だけじゃない。同じ学年のサッカー部だった奴が何人もいる。
「やっ」
そう言って、その元メンバーたちの後ろから姿を見せたのは、水本だ。
「おま……」
俺が話そうとしたら、水本が先にしゃべった。
「私がみんなを引っ張ってきたんじゃないよ。みんなも野島のことをずっと心配してて、『行きたい』って言うから、じゃあっていうので、来たの」
そこで羽村が口を開いた。
「俺は、別に野島がサッカーを続けようがやめようが、野島の人生なんだから勝手にすればいいって考えてる。ただ、言いたいことを言うだけさせてもらうぞ。水本から話を聞いて、お前、自分はたいしたプレイヤーじゃないと思ってたみたいだけど、それは絶対に違うぜ。野島はすごいって。俺が、全中でお前がスタメンから外されたのを、先生に抗議したのは、仲が良かったからなんかじゃなくて、ちゃんと実力で判断してのことだ。野島のゴールへの嗅覚、得点を取る能力は、間違いなく一流だよ。俺ら仲間だから、そんな気恥ずかしいことを口にはしなかったけれど、お前の才能にホレボレしてたんだ。それは俺だけじゃないと思うぞ」
「ああ」
今度は、うなずいた福井という奴が言葉を発した。
「味方で自分のチームに勝利をもたらしてくれるのはもちろんだけど、一緒にプレーして、当たり前のようにシュートを決める野島を目にしているだけで、楽しくて仕方がなかったんだ。まるでアニメのヒーローみたいだったんだから」
……褒めすぎだろ。
「俺も羽村と同意見で、野島がサッカーをやるかやらないかは自由にすればいいと思ってるけど——」
次に話しだしたのは、吉田だ。
「先生があんな大会が始まる直前でスタメンから外したのは、野島に試練を与えることで、もっと成長すると思ったからじゃねえかな。つまり、お前にはまだまだ伸びしろがあるって考えていたんじゃないかと思うんだ。だから、なおのこと、やめるのはもったいない。でも、お前の勝手だがな」
お前ら、俺の勝手だ勝手だって口にしながら、俺にサッカーを続けさせたいのが見え見えだよ。
「ありがとうな、みんな。わざわざ、俺なんかのために……」
「気にすんなよ」
羽村が言った。
「俺たち仲間で、それにお前は善い奴だから、自分たちの意思で来ただけなんだから。俺たちに気を遣って、無理にまたサッカーをやることなんかないぞ。みんな、人それぞれで、別のことがもっとお前を幸せにするなら、そっちにしたほうがいいんだから。だけど、くり返しになるが、お前は自分で考えている以上にサッカーの才能があるってことを教えてやりたかったんだ」
そうして、羽村や水本たちは帰っていった。
俺は己の部屋に戻って、再びベッドの上に寝転んだ。
傍から見たら安っぽいドラマや漫画みたいだったろうけれども、本当に俺は人に恵まれてたんだな。
富田先生にしても、確かにあの判断は、工藤が加入するまでポジション争いとは無縁で安泰だった、俺のためにやってくれたと思えなくもない。
それから、俺は一晩中、どうするかを考えた。
朝。俺はリビングに行き、揃っていたみんなに宣言した。




