とある女と通常旦那
「さて…どちらかしらねぇ」
「ゴクリ…」
「あらあら」
「うちのバカ旦那がすみません…」
今日は定期健診。
三岳先生から恐らく性別が分かるだろうと。
今日の検査でお腹にいる私たちの子供の性別が分かる。
紅葉と相談し、性別を聞いた上で名前を決めようと決めた。
性別を聞かずに、産まれてから名前を決めることもできたが、事前に名前を決め、産まれてくる我が子を待つことにした。
「どっちかしら。うーん…」
「………」
「紅葉落ち着きなさいよ…」
先生がエコーを見ながら確認している。
紅葉は食い入るように画面を見ている。
見て分かるとは思えないけど…。
「ん~…」
「んー…?」
「ん?」
「うん」
先生がポンと手を叩く。
どうやら分かったみたい。
紅葉はびくっ!とさらに緊張してるみたいだけど…。
「聞きたい?」
「ぜ、是非!」
「お願いします」
先生が画面から目を離し、紅葉と私を見る。
事前に先生には性別を知りたいと伝えていたが、先生から改めてどうするか聞かれた。
「女の子よ」
「女の子か~」
「………」
うふふ。
あなたは女の子なのね。
産まれたらママと一緒に綺麗になろうね。
紅葉に似てるかな?私に似てるかな?
どっちだろうなぁ…。
「紅葉?」
「紅葉くん?」
「………」
喜んでいる先生と私とは正反対の雰囲気を出している紅葉。
あれ?女の子が嫌なの?
「紅葉―――」
「よっしゃああああああああああああ!!!嫁にはやらん!嫁にしたけば父を超えてみせよ!娘に手を出す男は俺がこの世から消してやるっ!!!」
「静かに」
「むぎゅ…」
案の定紅葉だった。
いつもの紅葉。
心配した私がバカでした。
ここは病院なんだから静かにしてね。
「産まれてくる女の子は大変ねぇ」
「その通りです…」
「ふふん」
先生の言う通りだから頭が痛い。
今でこれなら産まれて大きくなったらどうなるの…。
パパ嫌い!なんて言われた日には紅葉は落ち込みそうねぇ…。
「はい、母子ともに今回も問題なしね。このまま順調にいくといいわね」
「日に日に大きくなっていくお腹が愛おしいです。そのうちお腹を蹴ったりするのが楽しみです」
「私も楽しみにしてるわね」
「はい」
今回の検診も問題なし。
問題なかったけど、私も気をつけて生活しないとね。
私一人だけの体じゃないし、娘にも無事に生まれてほしいしね。
帰宅し、美穂さんと和彦さんにも女の子であることを伝え、二人とも喜んでくれた。
葵ちゃんの産んだ子が男の子だったから初孫娘で嬉しいのかな?
検診の後から静かな紅葉が怖い。
ずっと何かを考えている雰囲気。
もしかして娘の名前でも考えちゃってるのかな?
それとも成長した娘の妄想でもしちゃってるかな?
「愛海」
「はい」
夕食後に紅葉と私の自室にて紅葉が私にお願いしてくる。
これは妊娠が分かってから紅葉の日課になった行動。
私は服を捲り…。
「はい」
「ありがと」
赤ちゃんのいる大きくなった私のお腹に耳をあてる。
まだ小さいから、何も分からないと思うけど…。
それでも紅葉からすると我が子を感じることができるらしい。
私はいつも一緒だもんねぇ。
「女の子…」
「女の子だったね」
「娘…娘…娘…娘!」
私は紅葉の頭を撫でる。
紅葉はお腹から頭を上げ。
「閃いた。名前は華凛」
「へ?」
「産まれてくる子の名前は華凛」
華凛?
産まれてくる赤ちゃんの名前?
「お腹に耳をあてたら閃いた。というより娘が華凛だよ~って言ってた」
「華凛…。華凛ちゃん。パパがもう名前を決めちゃったぞ~。産まれてくるの待ってるわね」
「天啓とはこのことですわ。かり~ん。パパ待ってるからね~」
産まれてくる子供の名前が華凛に決まった。
本当にいいのかな?
まだ時間があるからしっかり話し合おうね。
でも華凛って名前には私もしっくりきちゃうのよねぇ。
ふふ、華凛ちゃん。
パパもママも待ってるわよ。
元気に育つのよ。




