閑話:とある男の初デート
ヒッヒッフー!
わたくし竹科 紅葉非常に緊張しております。
緊張し過ぎて心臓バクバク。
手汗ヤバい。
ついでに挙動不審。
周囲の同じように待ち合わせをしている人たちからは不審者に思われてないだろうか…。
「ヤバいよヤバいよ…」
なんでそんなに緊張しているのかだって?
それは…!
それは!
なんと!!
なんとっ!!!
愛海との初外デートだからですっ!!!
え?桜見にいったじゃん?
それは付き合うまえだったから。
お家デートしたじゃん?
それは家でのデートだから。
外でデートするのは付き合って初めてなんですよ!
そう。
俺は愛海との待ち合わせでとある場所にいるわけですよ。
集合時間の1時間前だけどね!
愛海と付き合って3週間。
付き合ってすぐにお家デートとかいう高難易度クエストをクリアした愛海と俺。
翌週も愛海はお家デートにやってきた。
そして今週だ。
今週は愛海に予定があり、お家デートはなし。
だけど、その代わりに愛海が土曜日に外でデートをしようと。
竹科 紅葉という魚の前に垂らされた釣り針に即食いついた俺。
初めての外デート!
ひゃっふい!
喜んだのもつかの間。
あれ…。
外デート?
何しよう…。
どこ行こう…。
ええ!数年間彼女のいなかった俺に死角はないっ!
ごめんなさい。
死角だらけで資格なしです…。
足立ちゃんやリス子に最近のおススメを聞いたり。
女子会で愛海が何かを求めてなかったか聞いたり。
リス子が「ラブさんに聞いてみるのはどうですか?」と。
罠!圧倒的罠!
ダメだ!それはダメだ!
もしも愛海に「紅葉ってデートプランも組めないのね。さよなら」なんて言われた日には凹む自信がある。
故に俺は考えた。
必死に考えた。
ついでに仕事中にも考えた。
そして俺の導き出した答えは…。
そう!無難に映画デート!!!
普通過ぎてつまらない?
笑え。笑いたければ笑うがいい。
俺は思い出した。
先週泊まりに来た愛海と映画を見ていた時に愛海が、「この映画の続編今上映してるらしいよ」と。
愛海と俺が見た映画はアクション映画だ。
2人とも第1作から見ている好きなシリーズ。
だから無難に映画デート。
愛海に見に行こうと誘ったら可愛いスタンプとともに是非との連絡があった。
たかが映画。
されど映画。
金曜日の夜は遠足前日の小学生かよと言わんばかりの寝不足。
寝たのは遅かったが、起きたのは早かった。
緊張し過ぎて勝手に目が覚めた。
それから準備をし、集合時間の2時間前にここにやってきた。
勿論愛海はいない。
俺は愛海を待ちながら何本目になるか分からないタバコに火をつける。
「紅葉?」
「愛海?」
あれ?
目の前に愛海がいる。
さっき時間を確認したら集合の1時間前だったのに。
まさか…。
愛海に会いたくて時を跳ばしたのか!?
帝王はこの紅葉!以前変わりなくっ!
「いつからいるの?」
「2時間前かな…」
「ええ…。まだ1時間前よ」
ふっ…。俺に時を跳ばすスタンドは発現していないみたいだ。
って、愛海さーん。
愛海も1時間前なのに…。
「「………」」
「俺たち…」
「私たち…」
「「似た者同士だね」」
愛海も初デートに緊張してるのかな?
だから1時間前に来たのか…。
俺が早く来てたからよかった。
1時間も愛海を待たせていたらナンパの嵐だっただろう。
俺の愛海は誰にも渡さん!
愛海は俺の女だ!彼女だ!
「少し早いけど行こうか」
「そうだね」
火をつけたタバコを喫煙所の灰皿に捨て、愛海の手を取って映画館に。
あれ?いつの間にか緊張しなくなってるな…。
愛海に会えたら安心からか幾分か落ち着いた。
と言ってもこの後がどうなるか不安と言えば不安なんですけどね!
「良かった」
「ねー」
愛海と映画を見終わり、映画館を後にする愛海と俺。
内容はシリーズ最高と謳われるだけあって、最高の一言に尽きる。
あっという間の2時間だった。
見終わったと思われる周囲の人々も同じように絶賛している。
愛海と俺もあのシーンのここがーと周囲の人々と同じように映画の感想を口にしている。
「この後どうするの?」
「夕飯には早いし…」
予定では映画を見てから食事して…という流れだったが、如何せん集合時間の1時間前に集合してしまった。
だから夕飯にはまだ早い時間。
どうしようかな。
愛海とそこら辺をウインドウショッピングかな。
「あそこ行きたいかな」
「マジっすか…」
愛海さん。
マジですか。
そこ行きたいんですか…?




