とある女と正常旦那
「今回も問題なしね。母子ともに問題なし」
「ありがとうございます」
今日は定期健診。
今日も紅葉と2人…お腹の命を入れたら3人で検診に来ていた。
今回で10週目の定期健診だ。
次の検診で男の子か女の子かわかると思う。
どっちかなー?
男の子でも女の子でも2人の子供に違いない。
紅葉は名前の決めるのに必死になっちゃうかな?
…お願いだから麻雀で勝った人が決めるしないでね。
「少しお腹が目立ってきたかしらね?」
「そうですね。少しづつではありますが、妊婦さんって感じになってきました」
「………」
三岳先生と喋っているときの紅葉が静かで不気味だ。
少し前まで煩いくらいに騒いで落ち着きのなかった紅葉がだ。
シロハに毎日うっとおしいと引っ掻かれていた紅葉がだ。
ある日を境に騒がなくなった。
無関心になったわけじゃない。
以前と変わりなく、新しい命には関心があるのは変わりない。
前と比べて落ち着いてきたかな。
そうだとしても…。
そうだとしても検診中に付き人みたいに終始無言ってどうなの!?
極端すぎない!?
前みたいにポンコツ紅葉よりかはいいんだけど…。
「今日の紅葉くんは静かなのね」
「え、ええ…」
検診を終えた三岳先生が紅葉に声を掛ける。
紅葉は…。
「………」
「紅葉?」
言葉を発しない。
どうしたの?
「紅葉くん?」
「………緊張」
三岳先生に声を掛けられた紅葉が一言だけ。
「へ?」
「愛海の姿に緊張してました。愛海の検診中のお腹を出した姿が女神過ぎまして。脳に焼き付けることはできましたが、この神々しさをどうしようかと。毎回写真に撮影…いや!絵師を呼んで絵にするのもまた―――」
「ストップ」
「はい…」
紅葉はやっぱり紅葉だった。
前より静かになったけど、紅葉はやっぱり紅葉よね…。
今でこんな状態だったら子供が産まれたらどうなることやら…。
前途多難ね…。
「ふふふ」
「先生?」
ポンコツ紅葉の言葉に先制が笑う。
その姿は何かを思い出しているみたい。
「本当にあなたたちは親子よねぇ。和彦くんのときは使い捨てカメラで撮影していたわね。そのうちちゃんとしたカメラを買ってきて撮影していたかしらね。すぐに美穂ちゃんに殴られて止めたのを思い出してね」
「ええ…」
血は争えないのね。
和彦さんも中々…。
どうしよう。
この竹科家の男どもを…。
「愛海ちゃんは大変ねー。美穂ちゃんと相談して対処しなさいね」
「はい…」
「和彦くんも初孫じゃないから問題ないとは思うけど」
その通り。
葵ちゃんの子供を取り上げたのも三岳先生。
葵ちゃんは元気な男の子を出産した。
それ以上に元気だったのが和彦さん、紅葉、良亮くんの3人だ。
思い出すだけでも頭痛がしてくる。
陣痛が始まったと葵ちゃんから連絡があり、竹科家の面々は病院に集合した。
その時の男どもといえば…。
待合室に椅子に座って3人で音楽でも奏でているのかという貧乏ゆすり。
カタカタカタカタカタカタ…。
うるさい!と美穂さんから注意を受けていた。
その後は3人とも立ち上がって処置室の前をグルグルグルグルグルグルグル…。
なんだろう…。
竹科家の男はどうしてこう…ポンコツなんだろうか。
何もなければ普通なのに。
結局3人とも美穂さんから鉄拳制裁を食らって静かになった。
といっても床に正座してたけど…。
そして産まれた新しい命。
先生から母子ともに健康ですと。
それを聞いたポンコツたちは…。
和彦さんは立ったまま失神。
紅葉は選挙運動みたいに全員に握手をして私にキスしてきた。
良亮くんは正座で痺れたのか、立ち上がった瞬間に足が滑って壁に激突してた。
なんだろう…。
ポンコツだらけじゃん!
美穂さんと千尋ちゃんと私はポンコツ3人衆を無視してたけど。
「今度は大丈夫だと思います…」
「どうかしらねぇ?今度も楽しみにしてるわね」
「任せてください!」
「任せたくない…」
紅葉…。
当日は縛って床にでも放置しておこうかしら…。
「シートベルトオーケー?」
「大丈夫」
定期健診の帰り道。
病院の駐車場で車に乗り込んだ。
「愛海」
「ん…んっ!?」
車を出す前に紅葉が不意にキスしてきた。
ちょっと!ここまだ病院!
葵ちゃんのときもキスしてきたからビンタしておいた。
今日もビンタしてやろうかしら…。
「ちょっと…」
「ふふ…。ちょっと怒った愛海も愛おしい」
「はい?」
「それじゃ安全運転で我が家まで」
はぁ…。
こんなお父さんでごめんね…。




