とある女と新入社員④
紅葉が目を覚ましてから大変だった。
先生から、今日は検査入院ということで、一日宿泊してから退院になった。
紅葉は萩田さんに連絡し、明日は出社しなくていいことに。
着ていたスーツは着れないので、私が紅葉の家から着替えを持ってくることにした。
私はお母さんに事情を説明し、今日は帰れないことを伝えた。
お義母さんには紅葉の目が覚めたことをお伝えし、息子をよろしくねーと頼まれた。
妹の千尋ちゃんとは変な出会いになっちゃったなぁ…。
病院は付添者の宿泊は禁止だということで、その日は紅葉の家に泊まった。
慣れたはずのベットも、紅葉がいないことでもの凄く寂しく感じた。
紅葉、寂しいよ…。
「ありがと」
「うん」
翌朝、朝一で紅葉のお見舞いに行った。
検査も問題なかったとのことで、無事退院の許可が下りた。
「失礼するよ」
「部長」
「え、あ…お世話になっております」
帰宅準備をしていると、紅葉の部長さんが病室を訪ねてきた。
「大丈夫か?」
「なんとか」
「あとはこっちでやっとくから、明日から出社してくれ」
「了解です」
部長さんも昨日の話を聞いて、今日の朝一で様子を見に来たようだった。
「あとは彼女に癒してもらえ」
「部長!」
「あぅ…」
部長さん(楠田さん)は、安心したように病室から出て行った。
癒すって…何を!?
「それじゃ、帰りますか。今日は愛海に癒してもらわないとね」
「バイク取りにいかなきゃ」
「せやった」
「「ただいまー」」
無事に紅葉の家まで帰ってくることができた。
紅葉のバイクは、現場組の方たちが、会社の駐車場まで移動してくれていた。
事務所で紅葉のヘルメットなどを受け取り、お礼を言って会社を後にした。
聞いた話だが、久坂はセクハラや取引先への暴力などで懲戒解雇になるとの噂だ。
ざまあみろ。
私の紅葉にあんなことした罰よ。
これで会わなくていいと思うと気持ちが楽になる。
「ん…」
「喜んで」
紅葉にキスをせがむ私。
紅葉は触れるだけのキスをしてくれた。
うー…、やっぱり安心する。
「さて、もう一回風呂入っていい?」
「スーツどうする?」
「クリーニング屋に持ってかなきゃだなぁ…」
「いいよ。私が持ってくから。その間にお風呂入っちゃって」
「ありがと」
さてと!
やることはたくさんあるよー。
テキパキやらなきゃね。
「ごめんね」
「謝るの禁止」
「ちょっと!脇腹はダメだって!」
ただいま紅葉の足の間に挟まれている愛海です。
紅葉には、今回の事件の詳細を話した。
久坂に半ストーカーみたいなことされ、その結果があのような形になってしまったと。
謝ったら脇腹くすぐられたんだけど!
くすぐったいからダメだって!
「俺こそ気づけなくてごめん」
「なんで謝るかなー」
「ちょ!指つねらんどいてや!」
「脇腹から上に上がってきた悪い指にお仕置きしただけだし」
隙あらば変な所を触ろうとしてくる紅葉。
病み上がりだからって甘えさせないよ。
「よいしょっと」
「きゃっ!?」
紅葉にぐるんと回転させられた。
紅葉と向かい合う形になった。
動かすのはいいけど、脇腹掴まないでよ…。
「先週から悩んでた愛海に気づけなかった俺が悪い。これは俺の落ち度」
「………」
「俺も愛海の全てが分かるわけじゃない。だから、悩み事は相談して。これでも彼氏なんだし」
「…うん」
ごめんね。
そうだよね。私が紅葉に相談してれば、こんなことにならなかったかも。
一人で抱え込む問題じゃなかった。
一歩間違えばストーカー事件の再来だったかもしれないし…。
「俺は相談しにくい?」
「そんなことない」
「俺でダメなら玲奈さんとか、和田さんでもいいんだよ」
「うーん…、そうだね。これからはちゃんとします」
ママはいいけど、玲奈は嫌だなぁ…。
金的で殺せとか言いそうだし…。
玲奈は最終手段かな。
「んじゃ、仲直りのキスで」
「ん…」
ん…?
こーよーさん?
どこ触ってるの?
まだお昼ですよー。
「ねぇ…」
「何でございましょうか」
「まだお昼なんだけど?」
「?」
いやいやいや。
何?みたいな顔されても困るんだけど!
何?私がおかしいのかな?
「…したいの?」
「愚問にござるよ」
「はぁ…。もう一回頭からお酒かけてやろうかしら」
「ちょ、それはダメだって!」




