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MHISTORYM  作者: しおにまる
第1章 入学編
7/26

1-6 仲間

学長室へ入ると、机の向こうには、入学式で壇上に立っていた白髪の男が座っていた。

教師はここまでの経緯を簡単に説明した。

学院の生徒ではなく、入学の手続きもしていないこと。身元を確認できるものも持っていないこと。

ノノはソウタの隣で、落ち着かない様子のまま黙って立っていた。

話を聞き終えた学長は、ソウタへ目を向けた。


「なるほどな。で、君はどうしたい?」

「……ここにいても、いいなら」

「そうか。なら、いればいい」


あまりにあっさりした返事に、教師が眉を寄せた。


「いや、ルーファス学長。入学に必要な書類も何もないんですが」

「そんなのは後でいいだろ」

「後でって……手続きも何もしてないんですよ」

「まあ、形式なんてどうとでもなるさ」


教師はまだ納得していない様子で続けた。


「それに、こいつを入れたら今年の一年は五十一人になりますよ」

「一人増えたくらい、どうってことないだろ」


ルーファスはそう言って、気にした様子もなく笑った。


「来たいやつをわざわざ追い返すこともない。それで十分じゃないか」


教師はしばらくルーファスを見ていたが、やがて諦めたように息を吐いた。


「……分かりました」


そうして話は、驚くほど簡単に終わった。

しばらくして、教室の扉が開いた。

教師が一つの机を抱え、その後ろから椅子を持ったソウタとノノが入ってくる。

先ほどまで騒がしかった教室が、三人の姿を見るなり少し静かになった。


「戻ったぞ。……それと、こいつも今日からこのクラスだ」


一瞬の沈黙のあと、教室がざわつく。

制服も着ておらず、つい先ほどまでこのクラスの生徒ですらなかった少年が、もう同じ教室で過ごすことになったらしい。


「先生、早くない?」


どこかから上がった声に、教師は面倒そうに肩をすくめた。


「学長がいいって言ったんだ。俺に言うな」


空いている場所に机を置き、ソウタもその前へ椅子を運ぶ。

教師は机の位置を軽く確認すると、ソウタの服装へ目をやった。


「制服は後で手配する。それまではそのままでいい」


ソウタが頷くのを確認し、教師は教卓へ戻った。


「まあ、ちょうどいいか。まだお前らも互いのこと知らないだろ」


教室を見渡したところで、ふと思い出したように口を開く。


「そういや、俺もまだちゃんと名乗ってなかったな」


教卓に軽く手をついた。


「リキト・アーヴェルだ。今日からこのクラスを受け持つ。よろしく」


それだけ言うと、今度は生徒たちへ視線を向けた。


「じゃ、次はお前ら。順番に自己紹介してけ。名前と……まあ、好きに一言。長いのはいらん」


最初の生徒が立ち上がり、それを皮切りに自己紹介が始まった。

緊張して声が小さくなる者もいれば、妙に気合いの入った挨拶をする者もいる。

やがて順番がユエルまで回ってきた。

ユエルは席を立つと、教室を軽く見渡した。


「ユエル・レインフォード。よろしく」


それだけ言って、すぐに座る。


「短っ」


ユエルは座ったまま前を向いて答えた。


「長いのはいらないって言ってただろ」

「そういう意味じゃなくない?」


ユエルはそれ以上何も言わなかった。

その様子にアルレアは小さく笑い、自分の番になると勢いよく立ち上がった。


「アルレア・フェルティアです! よろしく!」

「いっぱい友達できたらいいなって思ってます!」


満足そうに座ると、その隣でニーアが静かに立ち上がった。


「ニーア・セルディスです。よろしくお願いします」


それだけ言って座ろうとする。


「ニーアもユエルと変わんないじゃん」

「……じゃあ、静かな人だと助かります」

「私のこと言ってる?」

「さあ」


アルレアが不満そうな顔をする横で、ニーアは何事もなかったように席についた。

いくつかの自己紹介を挟み、今度はノノの番が回ってくる。

ノノは少し緊張した様子で立ち上がった。


「ノノ・エルミナです。えっと、よろしくお願いします」

「人と話すのは、あまり得意じゃないですけど……仲良くしてもらえたら、嬉しいです」


小さく頭を下げると、ほっとしたように息を吐いて席についた。

さらに何人かが続いたところで、自己紹介が止まった。

次の席の女子生徒が、机に突っ伏したまま動かない。

リキトがその姿を見て、面倒そうに声をかけた。


「おい。次、お前だぞ」


女子生徒の眉がぴくりと動いた。


「……うっせぇな」


ゆっくりと顔を上げ、眠そうな目で教卓の方を見る。


「自己紹介。寝るならそのあとにしろ」

「……あ?」


面倒くさそうに髪をかきながら立ち上がると、そのまま教室を見渡した。


「ガルシア・ベルガルド」


それだけ告げると、すぐに椅子へ腰を落とした。

ぶっきらぼうな態度と近寄りがたい雰囲気に、教室が一瞬だけ静かになる。

ガルシア本人は気にした様子もなく、再び机へ突っ伏した。


「……まだ終わってないから寝るなよ」

「終わったら起こして」

「起きてろ」


教室の何人かが小さく笑った。

ガルシアは返事もせず、片手だけをひらひらと振った。

その後も自己紹介は続き、最後にソウタの番が回ってきた。

再び教室中の視線が彼へ集まる。

ソウタは少しだけ迷ってから立ち上がった。


「……ソウタです」


そこで一度、言葉が止まる。


「えっと……分からないことが多いので、迷惑かけるかもしれません」

「よろしくお願いします」


わずかな沈黙のあと、アルレアが真っ先に笑った。


「よろしく、ソウタ!」


それにつられるように、教室のあちこちから声が上がった。

ソウタは少し驚いたように目を瞬かせ、それから小さく笑った。

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