1-4 例外
クラス分けを確認したアルレアとニーアは、一組の教室へと向かった。
廊下には同じように自分の教室を探す新入生たちが行き交っている。
教室に着いたアルレアは、中へ入るなり辺りを見回した。
そして、窓際の席に見慣れた姿を見つける。
「ユエル!」
呼ばれたユエルが顔を上げた。
近づいてくるアルレアとニーアを見て、少しだけ目を細める。
「……また一緒なのか」
「なにその言い方!」
「別に嫌とは言ってないだろ」
「絶対ちょっと嫌そうだった!」
「気のせいだ」
横でニーアが小さく息を吐く。
「朝から元気だね」
「だって、三人一緒だよ!」
「それは見れば分かる」
「ニーアまでその言い方!」
教室には次々と生徒が入ってきていた。
空いていた席も少しずつ埋まり、初対面同士のぎこちない会話や、知り合いを見つけた声があちこちから聞こえてくる。
そんな中、教室の入口に小さな女の子が姿を見せた。
その後ろには、この辺りではあまり見かけない服を着た少年が立っている。
周りの新入生とは違い、学院の制服を着ていない。
その姿に、ユエルが一度だけ視線を向けた。
女の子は少しおどおどした様子で教室の中を覗き込み、確かめるように呟いた。
「……ここだね、一組」
ゆっくりと教室へ足を踏み入れた女の子は、辺りを見回す。
すると、誰もいない隣へふと目を向け、ほんの少しだけ表情を和らげた。
「……お姉ちゃんも、一組だったんだ」
傍から見れば、ただ独り言を呟いているようにしか見えない。
けれど、その視線の向け方や言葉を待つような間は、まるでそこに誰かがいるかのようだった。
女の子はそのまま教室の中へ進み、後ろにいた少年も少し遅れてついていった。
女の子は空いている席を見つけると、その前で足を止めた。
「私、ここみたい」
「そっか」
少年はそう返し、教室を見渡した。
だが、並んでいる机にはすでにそれぞれ生徒が座っている。
少年の分らしい席は、どこにも用意されていなかった。
仕方なく、少年は女の子の近くに立ったまま待つ。
しばらくして、教室へ一人の教師が入ってきた。
教卓へ向かいかけた教師は、制服を着ずに立っている少年に気づいて足を止める。
教室を見渡し、手元の名簿へ目を落とした。
「……一人多いな」
もう一度人数を確認してから、教師は少年を見る。
「お前、名前は?」
「……ソウタです」
教師は名簿の上から順に目を走らせる。
だが、その名前はどこにもなかった。
「入学許可証は?」
「持ってないです」
「制服は?」
ソウタは自分の服へ目を落とした。
「……ないです」
教師はしばらく黙ったままソウタを見た。
やがて大きくため息をつき、面倒そうに額へ手を当てる。
「……初日から勘弁してくれ」
教室の何人かが、思わずソウタへ視線を向ける。
その中で、アルレアが少しだけ首を傾げた。
「でも、ずっと立たせとくのもかわいそうじゃない?」
教師がアルレアを見る。
「ここの生徒かどうかも分からない怪しいやつを、いきなり教室に混ぜられるか」
「あ、そっか」
あっさり納得したアルレアに、ニーアが小さく笑う。
教師はもう一度ソウタへ向き直った。
「で、どうしてここにいる?」
ソウタは答えに困り、小さな女の子へ視線を向けた。
女の子も少し困ったようにソウタを見返している。
「昨日、来たばっかりで」
「どこから?」
その問いに、ソウタはすぐには答えなかった。




